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ボトルネック*米澤穂信

  • 2007/12/26(水) 19:46:39

ボトルネックボトルネック
(2006/08/30)
米澤 穂信

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懐かしくなんかない。爽やかでもない。
若さとは、かくも冷徹に痛ましい。
ただ美しく清々しい青春など、どこにもありはしない。
青春ミステリの旗手、最新書き下ろし長編。

恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。


高校一年の嵯峨野リョウは東尋坊にきていた。二年前、中学二年のときに突風に煽られ崖から落ちて死んだ諏訪ノゾミを弔うためである。そこへ母からメールが入った。大学受験に失敗し、自分探しの旅に出て事故を起こし意識不明だった兄が死んだという報せだった。
ノゾミに野の花を手向けたとき突然めまいに襲われ、目を覚ますとそこは金沢の自宅近くの浅野川の河川敷だった。
自宅には、生まれなかったはずの長女・サキがいた。どうやらここは、サキが生まれてリョウが生まれなかった世界のようだった。

リョウが元いた世界では、ノゾミは事故で亡くなり、両親は不仲で兄は死に、いいことなどなにもなかった。それに比べてサキのいる世界では、両親は和解して仲良くなり、兄も大学生になり、なによりノゾミが能天気といえるほど明るく生きているのである。リョウのいる世界とサキのいる世界、悪いことはすべてリョウのいる世界で起こり、サキのいる世界はサキの機転と想像力とでよい方へと動いているのである。好転している世界を目の当たりにしても、リョウにはそこに居場所はなく、そこでは彼のことを知る人は誰もいないのだ。リョウの無力感を思うと躰中が強張る心地がする。
そしてラスト・・・・・。せっかく元の世界に戻れたのに、追い討ちをかけるような母からのメールである。救いようもなく重い気持ちにさせられる。リョウに救いの手が差し伸べられることはあるのだろうか。あまりにもやりきれない。




はじまり

       序章 弔いの花

 兄が死んだと聞いたとき、ぼくは恋したひとを弔っていた。
 諏訪ノゾミは二年前に死んだ。ここ東尋坊で、崖から落ちて。せめて幸いなことに即死だったという。この二年、ぼくはノゾミの死んだ場所を訪れることができなかった。花だけでも手向けたいと、命日に近い今日を選んでようやく来ることができたというのに、兄のおかげでとんぼ返りしなくてはならない。死にざままで、まるで嫌がらせのようだ。




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粋な提案

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ボトルネック 米澤穂信

装画はフジモト・ヒデト。装幀は新潮社装幀室。書き下ろし。 主人公で高校一年生の語り手の僕、嵯峨野リョウは2年前に事故死した恋人、諏訪ノゾミを弔うため東尋坊を訪れます。強い眩暈に襲われ崖下へ落ちてしまったはずが、

  • From: 粋な提案 |
  • 2008/02/01(金) 17:09:04

この記事に対するコメント

索引からうかがったんですが、もしかして米澤さん初読みでした?。
ものすごい衝撃でしたね。大丈夫でした?。
私は読んだ後、ダメージが大きくてしばらく何も手につきませんでした。
この作品からだとちょっとためらいますが、
米澤さん、もう少し軽いのもありますので、他のもよろしかったら…。

  • 投稿者: 藍色
  • 2008/02/01(金) 17:08:43
  • [編集]

アンソロジー以外では初でした。
かなりきつかったですねぇ。
いきなりきついのを選びすぎたかしら・・・。
藍色さんのレヴューを参考にさせていただいて
ほかの作品も読んでみます。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2008/02/01(金) 18:36:00
  • [編集]

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