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緋友禅*北森鴻

  • 2008/02/02(土) 08:54:26

緋友禅―旗師・冬狐堂緋友禅―旗師・冬狐堂
(2003/01)
北森 鴻

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わたしは宇佐見陶子と申します。骨董業―といっても旗師といいまして、店舗を持たずに競り市から競り市へ、骨董店から骨董店を渡り歩いて品物を仕入れ、流通させるバイヤーのような存在なのです。骨董の世界は、魑魅魍魎の住処と言われます。時に悲劇が、時に喜劇が、ない交ぜに流れて人々を押し流してゆく。そうした光景が日常的に観察される世界です。騙しあいと駆けひきの骨董業界を生き抜く美貌の一匹狼。古美術ミステリー。

陶子は、無名の作者のタペストリーに惚れこみ、全作品を買い上げることを即決。しかし作品は届かず、作者のアパートを訪れた陶子は彼の死体を発見する。半年後、陶子は意外な場所でタペストリーを再び目にする……。


旗師・冬狐堂、宇佐見陶子シリーズの三作目。
表題作のほか、「陶鬼」 「「永久笑み」の少女」 「奇縁円空」

ミステリというひとつの括りだけには収まりきらない作品である。歴史、民俗学、人間ドラマ、などなどさまざまな要素を含み、店舗を持たずに骨董を商う旗師としての、またひとりの女性としての陶子の生き様の魅力と相まって物語に奥深さを加えているように思われる。
どの世界もプロとして生き抜こうとすれば壮絶な闘いになるのだろうが、魑魅魍魎が跋扈するといわれる骨董の世界の、表の優雅さからは想像もつかない裏の駆け引きの凄まじさが、それだけでも興味をそそられる。
これからも冬狐堂ここにあり、という活躍を見せて欲しい。




はじまり

       「緋友禅」

          一


 逢魔が時。たそがれ時。
 言葉は現実を言い表す機能をすでに失ってはいるが、まだ存在価値をわずかに残していることを、宇佐見陶子はふと感じた。夕暮れがたとえ迫っても、街はすぐに光に覆われ、闇の居場所はどこにもない。けれど不意に、会ってはならないものに出会ってしまいそうな危うさは、水や空気のさりげなさで、そこここにある。

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