fc2ブログ

琉璃の契り*北森鴻

  • 2008/02/04(月) 19:31:24

瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (旗師・冬狐堂)瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (旗師・冬狐堂)
(2005/01)
北森 鴻

商品詳細を見る

私は旗師をやめない。狐は負けない。騙しあいと駆けひきの骨董業界を生きる“冬狐堂”こと宇佐見陶子を襲う眼病。付け入ろうとわけありの品を持ち込む同業者に立ち向かう。古美術ミステリー。


表題作のほか、「倣雛心中(ならいびなしんじゅう)」 「苦い狐」 「黒髪のクピド」

宇佐見陶子シリーズ四作目。
旗師としての陶子の目に異変が!網膜剥離の危険を含んだ飛蚊症を患う陶子は、視力を失うことはないとは言われるが、病気によって旗師として悪い評判が立つことを怖れるのだった。
表題作では親友の横尾硝子をも巻き込む切り子碗の謎に深くかかわり、『黒髪のクピド』では、元夫のプロフェッサーDをも巻き込んで――というか、D共々巻き込まれて――人形の謎を解くことになる。
旗師としての陶子はシリーズを追うごとにどんどん強くなるような気がする。それも、横尾硝子や雅蘭堂の越名集治らの支えがあってこそだろう。彼らのキャラクターの魅力も見逃すことはできない。
ただ気がかりは、病気のことである。今後どうなっていくのだろうか。




はじまり

       「琉璃の契り」

        一

 ねえ、陶子。あんたとこうしてグラスを交わすようになって、もうどれくらいになるだろう。十年、いやもっとかな。結局は腐れ縁という奴なんだろうねえ。
 北向きのリビングの窓から吹き込んでくる夜風に、柔らかく揺れる髪の毛を掻き上げ、そのついでにとも言いたげな仕草で、グラスのルージュワインを、横尾硝子が飲み干した。粗雑に見えて、グラスの脚部に当てた指先にも、優雅といってよいほどの心遣いが滲んでいる。そこがいい、と陶子は思った。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する