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屋上物語*北森鴻

  • 2008/02/18(月) 17:14:41

屋上物語 (ノン・ノベル)屋上物語 (ノン・ノベル)
(1999/04)
北森 鴻

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老若男女が憩う空中の楽園―デパートの屋上では、毎日のように不思議な事件が起こる。自殺、殺人、失踪、そして奇妙な落とし物…。しかしここには、何があっても動じない傑物がいた。うどん店の主、人呼んでさくら婆ァだ。今日もまた右往左往する客や警備員を濁声で一喝するや、彼女は事件の核心へと斬り込んでいく。それにしても何故こんなに怪事件が頻発するのか。さくら婆ァとは何者なのか…。推理界の奇才が“屋上”を舞台に紡ぐ、空前の長編連鎖ミステリーの快作。


「はじまりの物語」 「波紋のあとさき」 「SOS・SOS・PHS」 「挑戦者の憂鬱」 「帰れない場所」 「その一日」 「楽園の終わり」

探偵役はデパートの屋上のスタンドのうどん屋の店主・さくら婆ァであり、事件の中心は屋上を訪れるさまざまな人々である。しかし、それを語るのは人ではない。あるときは稲荷大社の狐様であり、またあるときは年季の入った観覧車だったり、ベンチだったり、屋上自身だったりする。人と言葉を交わすことはできないが、彼らは屋上の出来事をだれよりもよく知っているのだった。
さくら婆ァさんと興行師の杜田との遠慮のない掛け合いが絶妙で、物語にリズム感を与えていて小気味よい。





はじまり

       「はじまりの物語」

 紙飛行機が宙に放たれた。
 白く、大きな紙飛行機はゆっくりと風に乗って、抜けるような蒼天をめざし、そこにある藍を切り裂く軌跡を残していった。
 だが。
 それが自由への疾走や、旅立ちを意味するものでないことは、いったん風に乗った機体がすぐに失速したことからも・・・・・いやそれよりも紙飛行機を宙へと放った指先の震えと、各々の指に付いた無数の小さな傷とが顕著に示している。

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