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夕子ちゃんの近道*長嶋有

  • 2008/03/28(金) 07:06:06

夕子ちゃんの近道夕子ちゃんの近道
(2006/04/27)
長嶋 有

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アンティーク店フラココ屋の二階で居候暮らしをはじめた「僕」。どうにも捉えどころのない彼と、のんきでしたたかな店長、大家の八木さん、その二人の孫娘、朝子ちゃんと夕子ちゃん、初代居候の瑞枝さん、相撲好きのフランソワーズら、フラココ屋周辺の面々。その繋がりは、淡彩をかさねるようにして、しだいに深まってゆく。だがやがて、めいめいがめいめい勝手に旅立つときがやってきて―。誰もが必要とする人生の一休みの時間。7つの連作短篇。


物語り全体に漂う なにか寂しげで地面からほんの少し浮かんだままのような心もとなさは、フラココ屋のアルバイトで二階に居候している「僕」がどこの誰ともわからないことがいちばんの理由だろう。いつでもどこへでも行ってしまえる不安定さを、しかしフラココ屋の店長は危ぶむでもなく大事な仕事を任せているのが不思議でもあるが当然であるようにも思えてしまう。
フラココ屋というちっとも儲かっているようには見えない古道具屋が、普通に暮らしながらもそれぞれに寂しさを抱えている登場人物たちをゆるく束ねていて、安心させられる。
タムラフキコさんの装画が物語の雰囲気をとてもよく表わしていると思う。
切なく寂しく、それでいてほっとあたたかくなるような一冊である。




はじまり

       「瑞枝さんの原付」

 フラココ屋の二階にきて一週間になる。部屋には和箪笥が一つ、本棚が一つ、大きな食器棚と鏡台もある。それらが壁際ではなく部屋の真ん中に並んでいる。箪笥の手前に食器棚を置いて、箪笥の中身を取り出すときはどうするのだろうとはじめは思った。すぐにここは倉庫代わりなのだと気付いたが、フラココ屋は西洋アンティーク専門店だから、和箪笥や鏡台があるのが不思議だ。壁際には号数の大きな、額装された絵画も何枚か、これは薄い布をかけられている。鏡台は押入れの前にあり、布団を出すのに苦労した。狭い部屋の端に布団を敷くと六畳間はほぼいっぱいになる。





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ゼロから

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長嶋有 「夕子ちゃんの近道」

大家さんの娘の夕子ちゃん。駅から家まで、なんとおりもの道を知っている。人の庭を通ったり、塀の上を登ったりなんか猫のようですが、最後の落ちにはびっくりしました。

  • From: ゼロから |
  • 2010/05/11(火) 10:04:07

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