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鬼*今邑彩

  • 2008/03/31(月) 17:15:17

鬼
(2008/02)
今邑 彩

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「みっちゃんに会った」と言い残して死んだ友人達。そんなはずない。だって、みっちゃんは…。言葉にできない不安感。おさまりのつかない気持ち悪さ。表題作を含む、誰をも奇妙な世界に誘い込む8編を収録した短編集。


表題作のほか、「カラス、なぜ鳴く」 「たつまさんがころした」 「シクラメンの家」 「黒髪」 「悪夢」 「メイ先生の薔薇」 「セイレーン」

普段何気なく歩いている道からほんの少し逸れただけで見ず知らずの風景に取り囲まれる心地になることがある。本作はそんな居心地の悪さと心許なさに薄ら寒さを覚える物語たちでいっぱいである。
しかも、ものすごく近いところにいつの間にか「死」が寄り添っていて、後ろからすっと腕を掴まれるようなうそ寒さをも感じるのである。





はじまり

       「カラス、なぜ鳴く」
          1

 その朝、柳瀬正一は、静かに聞こえるリズミカルな音で目を覚ました。枕元の時計を見ると、午前九時になろうとしている。休日の朝の起床はだいたいこんなものだ。隣の妻の布団はすでにも抜けの殻だった。起き上がってカーテンを開けると、清々しい朝の光が六畳の和室いっぱいに差し込んだ。

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