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女王国の城*有栖川有栖

  • 2008/04/16(水) 07:31:10

女王国の城 (創元クライム・クラブ)女王国の城 (創元クライム・クラブ)
(2007/09)
有栖川 有栖

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江神を追い信州入りした英都大学推理研の面々は、女王が統べる「城」で連続殺人事件に遭遇する。囚われの身となった一行は脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し…。待望のシリーズ書き下ろし第4長編。


実に十五年ぶりの学生アリス・江神二郎シリーズだそうである。しかも500ページを超える長編。
卒業できてもできなくてもこれ以上大学生ではいられなくなる江神が、はっきりした理由も告げずにいなくなった。どうやら木曽山中の不思議な町・神倉に行っているらしいと当たりをつけた推理研のメンバーは、江神を心配して神倉にのりこんだのだった。
神倉は、ペリパリという宇宙人を神として崇拝する宗教団体・人類協会の町であり、住民のほとんどは協会の関係者でもあり、町自体が協会の王国のような特異な場所なのである。江神に会うべく行動を起こしたアリスたちは、一度は協会の事情で拒絶されながらも「城」に入り江神と会うことができたのだったが、連続殺人事件が起こり、軟禁状態に置かれる。
十一年前の未解決の殺人事件や、町の唯一の宿泊施設・天の川旅館の女将の姪・晃子の駆け落ちなど、無関係と思われていた出来事をも次々とつなげて、江神は真相に迫っていく。
UFO、新興宗教、予言など現実離れした要素がふんだんに盛り込まれているのが事件をより複雑に見せ、読者を惑わせる効果をあげている。ばらばらと思われていた点が次々に繋がって、真相への線になっていく過程にわくわくさせられる。これだけの長編にもかかわらず、集中力を途切れさせない面白さである。





はじまり

       第一章 女王の都する所
          1

 微睡んでしまった。
 五月の午後の陽射しが、あまりに気持ちよかったせいだ。助手席では眠らないことにしているのに、瞼の裏に光を感じながら、つい。
 まるで天国。
 羽根布団にくるまれているよう。
 それなのに、この耳障りな音楽は何だろう?賽の河原に流れる御詠歌。まるで不似合いだ。
 ここは天国なのか、地獄なのか、いったいどっち?
 私は、うっすらと目を開けた。
 眼前に車が迫っている。

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