fc2ブログ

黄昏ホテル

  • 2008/04/18(金) 07:28:05

黄昏ホテル黄昏ホテル
(2004/11)
篠田 真由美、浅暮 三文 他

商品詳細を見る

ホテルを舞台に20人の作家が描く物語
ホテル・サンシャイン…人はそれを「黄昏ホテル」と呼ぶ。人気を誇ったホテルも今は見る影もない。そのホテルのある時代、あるひと時の人間ドラマを、ホテルの風景とともに描く。アンソロジー巨編。


「暗い日曜日」  篠田真由美
「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」  早見裕司
「インヴィテイション」  浅暮蜜三文
「カンヅメ」  森奈津子
「夜の誘惑」  近藤史恵
「黄昏色の幻影」  小森健太朗
「神輿と黄金のパイン」  笠井潔
「タイヤキ」  田中哲弥
「HOME AND AWAY」  久美沙織
「一つだけのイアリング」  雅孝司
「素人カースケの赤毛連盟」  二階堂黎人
「鏡の中へ」  野崎六輔
「セイムタイム・ネクストイヤー」  加納朋子
「名前を変える魔法」  太田忠司
「あなたがほしい」  黒田研二
「トワイライト・ジャズ・バンド」  山田正紀
「悪い客」  牧野修
「オールド・ボーイ」  我孫子武丸
「ふたつのホテル」  田中啓文
「陽はまた昇る」  皆川博子


ホテル・サンシャイン、本当は「日の出ホテル」というのだが、いつしか人々に「黄昏ホテル」と呼ばれるようになった。その黄昏ホテルを舞台にした20の物語である。
こちらとあちらの境界が曖昧になる黄昏時が妙に似合うこのホテルでは、不思議なことがよく起きるのである。20の不思議な出来事は、それぞれ違うテイストなのだが、黄昏ホテルという舞台がそれらを丸ごと呑みこんで、さらに不思議さを成長させているような相乗効果がある。プロローグとエピローグが、さらに不思議さを増すのに効果的である。





はじまり

       プロローグ 扉を前にして

 古びた建物が目の前にある。今、私がいるのは、まだ正面ドアの外だ。日はすでに傾き、まさに話に聞いたとおりの時刻。
 だが私はエントランスへ足を踏み入れることに躊躇し、行動に移せないでいる。脳裏に迷いが浮かぶ。今までの回想も。
 本当にたどり着いたのか、たどり着くことができるのか、そもそも本当にホテルが存在するのか、今ではそれさえ、曖昧な気持ちになっている。
 「黄昏どきに、そのホテルへ行くと、とても美しい。この世のものとも思えないほどに」
 ホテルのことを父はそういっていた。そしてその内容は、煎じ詰めれば、ただそれだけのことに収束する。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する