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青い鳥*重松清
- 2008/05/14(水) 13:36:41
![]() | 青い鳥 (2007/07) 重松 清 商品詳細を見る |
「よかった、間に合った――」
村内先生は中学の臨時講師。言葉がつっかえて、うまくしゃべれない。でも、先生は、授業よりも大切なことを教えてくれる…。いじめ、自殺、学級崩壊、虐待…。すべての孤独な魂にそっと寄り添う感動作。
表題作のほか、「ハンカチ」 「ひむりーる独唱」 「おまもり」 「静かな楽隊」 「拝啓ねずみ大王さま」 「進路は北へ」 「カッコウの卵」 という八つの物語。
連作の鍵は村内先生だが、主役は村内先生よりも村内先生が寄り添う生徒の方だろう。
か行とた行と濁音ではじまる言葉はスムーズに発語できずにつっかえてしまう村内先生。彼がひとつの中学にいるのは、ほんの短い間。事情がある先生の代わりに非常勤という形でやってくる。そして、ひとりぼっちの生徒に黙って寄り添い、見守って、凍った心を解きほぐしていくのである。先生が話すのはたいせつなことだけ。
どの物語も、どの生徒も、抱えきれないものをもてあましてどうすることもできずに、ひとりぼっちで淋しさに溺れそうなのに、精一杯突っ張っているのが見ていて辛い。村内先生が全面的に受け容れ、黙って寄り添っていてくれることで、少しずつ自分で自分を認められるようになり、強張りを解きほぐされていく様を見ていると、自分の中にまで村内先生の言葉が染み入ってくるようで涙が止まらなくなる。
そして、村内先生のあたたかさはもちろんなのだが、自校に彼を必要とする生徒がいることを受け止めて、その子のために彼を呼んでくれる学校のあたたかさもまた想うのである。
それでもなぜか、最後の物語のラストシーンでバスのリアウインドウから手をふる村内先生は、ほんとうにほんとうにうれしそうで、そしてたまらなく淋しそうに見えるのである。
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はじまり
『ハンカチ』
1
制服の上着やスカートにポケットがあってよかった。
<中学生活の締めくくりにあたって、城山中学のいいところと悪いところを書いてください>――三年生全員に配られた生徒会のアンケート用紙に、、わたしはそう書いた。
アンケートは無記名だった。<男・女>のどちらにも○を付けずに提出した。
でも、刷り上った『生徒会だより』に小さな字で並んだ回答の中で、わたしの書いた答えはやっぱり目立っていた。
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- From: じゃじゃままブックレビュー |
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この記事に対するコメント
吃音は重松氏の小説によく登場しますね。私自身もかつて吃音だっただけに、もどかしさがダイレクトに伝わります。ときおり、いたたまれなくなりますが・・・
子どもたちが幼いころお世話になっていた小児科の先生が吃音でした。
でも、村内先生の言葉のように、たいせつなことはしっかり伝わりました。
聞き手が上の空では聞けない、ということもあるのかもしれません。
そう思うとマイナスだけでもないような気がします。
またまた重松さんに泣かされてしまいました。
困窮している生徒に手を差し伸べる村内先生、
優しいアプローチが心に響きました。
そういえば、村内先生を呼んでくれる学校のあたたかさは見落としてました。
察知と配慮って大切ですよね。
村内先生の仕事が忙しくなくなる日が来ることはないのかしら、と思うと
複雑な気持ちにもなりますね。
カッコウの卵には号泣でした。みんなと同じということに窮屈さを感じて外部進学する女の子の話も私は好きなんですけど、あの話は、どちらかというと女の子と、ちょっとお堅い先生の方が印象的で、村内先生の印象は薄いんですよね。
でもカッコウの卵は、もう本当に号泣もので・・・。重松さんはこうでなくちゃ!?
わたしはもう第一話から涙ぽろぽろでした。
『カッコウの卵』には特に泣かされましたね。
自分自身のことは語らない村内先生
家に帰ったときに寄り添ってくれる人がいるといいなぁ、と切に思いました。
泣いてしまいました。
こんにちは。YO-SHIと言います。読書ブログやってます。
この本を読み終わったところです。
重松さんの本は初めて読んだんですが、本当に良い本に巡り合ったと思います。
子どもたちの心の描写が丁寧で、つらくなってしまうぐらいでした。
最後の1編が良いですよね。子どもたちのその後の人生が幸せなものである予感がして。
不覚にも少し泣きました。娘の前で。