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香港の甘い豆腐*大島真寿美

  • 2008/08/09(土) 16:33:48

香港の甘い豆腐香港の甘い豆腐
(2004/10)
大島 真寿美

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出生の秘密が、私を香港へと運んだ。孤独を初めて抱きしめた十七歳の物語。

ひとりが気持ちよかった。やっと、ひとりになれた。親や友だちから解き放たれた地。風はぶっきらぼうだけど、いじわるじゃない-。出生の秘密が、私を香港へと運んだ。たおやかで、ガッツな青春の物語。


生まれたときから父はいないと思って生きてきた十七歳の彩美(アヤミ)は、高校生活にも人生にも倦んでいた。そんなある日突然、母に香港に連れて行かれたのだった。そこに彩美の父がいるという。
香港の雑多で喧騒にあふれた街や人々に、初めは嫌悪感さえ覚えた彩美だったが、ぶっきらぼうななかのあたたかさを知るにつれ、次第に愛着を抱き、離れがたくもなるのだった。
人間同士の繋がりとか、覚悟とか、境遇とか、運命とか、パワーに満ちた香港という街でひとりになったときに吸収したものは、彩美がこれから生きていくためのまさに栄養になったようである。
彩美と母との親子関係には独特のものがあるが、彩美の母とその母である祖母との親子関係もまた不思議で魅力的だった。




はじまり

       第一章 香港上陸

 十七歳の夏のある朝、銃口を突きつけられるようにパスポートとエアチケットを握らされ、私は香港へ連れて行かれた。
 誰にって母親に。
 私には父親がいなかった。
 生まれてからずっといなかった。
 そのころの私は、なんとなく、うまくいかない諸々はすべてそのせいなんじゃないかと思っていた。人づきあいがへたなのも、自分に自信がないのも、頭が悪いのも、溌剌としていないのも、夢がないのも、希望がないのも、全部そのせい。
 いつごろそんな気持ちになったのか、はっきり記憶していないが、高校一年の終わりくらいから、ちょくちょく学校をさぼるようになっていたから、たぶんそのあたりだろう。




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香港の甘い豆腐 大島真寿美著。

≪★★★★≫ 17歳の夏。今までずっと会ったこともなかった、父に会うために香港に行くことになった。それも突然。 人付き合いが下手で、友だちから離れたら、すっとしちゃった彩美。 そんな自分の不器用さも、すべて父親がいないせいにしていた。 それなのに、突然、父...

  • From: じゃじゃままブックレビュー |
  • 2008/08/14(木) 00:00:40

この記事に対するコメント

あまり香港って好きでも興味もなかったんですけど、この本読んだ後、猛烈に羨ましい!って思いました。絶対行くぞ、とか興味が出たっていうんじゃないんですけど、彩美を生き生きとさせた香港という国そのものが羨ましいなって。

  • 投稿者: じゃじゃまま
  • 2008/08/14(木) 00:04:37
  • [編集]

場のパワーのようなものを感じさせられましたね。
おなじ人が集まっていたとしても、別の場所だったら違う結末になっていたのかも。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2008/08/14(木) 07:25:38
  • [編集]

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