fc2ブログ

窓の魚*西加奈子

  • 2008/09/01(月) 17:19:55

窓の魚窓の魚
(2008/06)
西 加奈子

商品詳細を見る

誰かといるのに、ひとりぼっち。

男の子のようなナツ、
つるりとした肌のアキオ。
明るく派手なハルナ、
ぶっきらぼうなトウヤマ。

誰も、本当のあたしを知らない-。ある日、2組のカップルが温泉へ向う。でも、裸になっても笑いあっていても、決して交わらない想い。大人になりきれない恋人たちの一夜を美しく残酷に描く。


一緒にいるのが不思議なくらい共通点のありそうもない二組のカップルが、寂れた温泉宿で過ごす一夜の物語である。
おなじ時間が、ナツ、トウヤマ、ハルナ、アキオ、とそれぞれの視点で語られる。他人のことはこれほどまでにわからないものなのだということがよくわかる。外から見えることと真実との落差が、ありそうで怖い。
彼ら以外の客は二組。老夫婦と、やせた女。彼ら四人の語りに挟み込まれるように、老夫婦の妻の語りが置かれている。宿を出たあとで、鯉のいる池に薬を飲んだ女の死体が浮かんでいたという知らせを聞かされ、あれこれと思い返している。
かかわりのない視点からの語りは、なんとはなしに緊張感のようなものを孕みつつ、それでも四人はちっとも変わらずにそれぞれが秘密を抱えて生きている。
そもそも宿がいくつもの秘密を抱え込んでいるようであり、不思議な厭世観に包まれる一冊である。




はじまり

       ナツ

 バスをおりた途端、細い絹糸のような風が、耳の付け根を怖がるように撫でていった。あまりにもささやかで頼りないのは、始まったばかりの小さな川から吹いてくるからだろうか。川は山の緑を映してゆらゆらと細く、若い女の静脈のように見える。紅葉にはまだ早かったが、この褪せた緑の方が、私は絢爛な紅葉よりも、きっと好きだ。目に乱暴に飛び込んでくるのではなく、目をつむった後にじわりと思い出すような、深い緑である。




V
V

TB
しんちゃんの買い物帳

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「窓の魚」西加奈子

窓の魚(2008/06)西 加奈子商品詳細を見る 誰も、あたしの本当の姿を知らない。あたしの本当の目から、涙がこぼれた。秋のある日、二組のカップ...

  • From: しんちゃんの買い物帳 |
  • 2008/09/05(金) 23:11:11

この記事に対するコメント

ご無沙汰です。忙しくって中々巡回が出来ませんでした。

主要の男女といい、見えない猫といい、すごく不思議な世界観でした。


ふらっとさんの「読み終えたばかり」から、いくつかTBさせてもらいます。
省略ですまぬ!ペコリ。

  • 投稿者: しんちゃん
  • 2008/09/05(金) 23:09:56
  • [編集]

お忙しいのに、お立ち寄りくださってありがとうございます。
TBもたくさんありがとう♪

こちらこそこのごろ書きっ放しなのでm(_ _;)m

  • 投稿者: ふらっと
  • 2008/09/06(土) 07:38:18
  • [編集]

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する