fc2ブログ

和時計の館の殺人*芦辺拓

  • 2008/09/14(日) 13:55:28

和時計の館(やかた)の殺人 (カッパ・ノベルス)和時計の館(やかた)の殺人 (カッパ・ノベルス)
(2000/07)
芦辺 拓

商品詳細を見る

巨大な塔時計の一風変わった文字盤が見守る中、怪事件が連続する!和時計の刻む独特の時間は、事件と関わりなく流れているようでもあり、犯罪に荷担しているようでもあり…。邸内を和時計に埋め尽くされた田舎町の旧家・天知家で、遺言書の公開と相前後して起こる不可能殺人。遺言の内容からは、殺人を起こす動機はうかがえないのだが…。遺言の公開に訪れた弁護士・森江春策が、複雑に絡み合った事件の深層に切り込んでいく。


探偵役の森江春策は本来は弁護士であるが、物語自体は正統的な探偵物語である。しかも舞台が古式ゆかしい和時計に埋め尽くされた館であれば気分的にもなおさら盛り上がるというものである。
そして、まさに読者の期待通りに密室殺人、凶器を同じくする別の場所での殺人、撲殺・・・、とまがまがしい事件が相ついで起こるのである。さらに、この館の主である故人の縁者たちは、複雑な関係にある。探偵小説としてこれ以上の道具立ては望めないだろう。
その上にさらに、和時計という現代の西洋式の時計とはまったく成り立ちの違う時の表わし方をする道具が重要なキーポイントとなっているのだから、まさにこの場でしか起こりえない事件であるといえる。
和時計の仕組みに精通していなければトリックは解けそうもないので、早々とそちらは諦め、探偵役の森江に任せて読み進んだが、最後の最後に明かされた事実には胸がすく思いもあった。





はじまり

       プロローグ

 雨は容赦なく大地を打ちのめし、白い奔流となって路上にあふれた。夕方までは、しみったれた小雨模様だったのが嘘のよう。まるでナイヤガラの大瀑布が、ふいに引っ越してきたみたいだった。
 そんな中、一台の車がヘッドライトを両の目玉のようにギラつかせ、降りくる水柱をかきわけながら駆け抜けていった。その内部では、一人の男が必死の形相でハンドルを握りしめ、フロントガラスの向こうを見すえていた。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する