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二つの月の記憶*岸田今日子

  • 2008/10/06(月) 13:38:53

二つの月の記憶二つの月の記憶
(2008/01/18)
岸田 今日子

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かけがえのない
快楽には
少しの独のある
ユーモアと
不思議な愛と
エロスが必要です。
今日子さんを
そのまま
食べて下さい。     佐野洋子


表題作のほか、「オートバイ」 「K村やすらぎの里」 「P夫人の冒険」 「赤い帽子」 「逆光の中の樹」 「引き裂かれて」

現実の時間を生きていると思っていたら、いつの間にかどこからか夢のなかに入り込んでしまったような心地の物語たちである。しかもその内容はといえば、安らかで穏やかな夢物語ではなく、どこか不穏で不安定で、胸のどこかに引っかかるようなものばかり。なのに、読者はいつの間にか岸田今日子ワールドに誘われ、包み込まれている。
明るい物語を暗いトーンで描いたような、あるいは逆に、暗い物語をパステルトーンで描いたような、据わりの悪さが魅力といえるかもしれない。





はじまり

       「オートバイ」

 少年は右手と右足でブレーキをかけて、左手でクラッチを切り、住宅街の、どうということもない二階家の前でオートバイを停めた。街灯は大分向こうの四つ角にあるだけだったし、玄関の外の明かりも消えていたから、舗装されていない足元の、手頃な石を選ぶのに少し時間がかかった。

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この記事に対するコメント

いま読んでいるところです。短い文章で世界を構築する、というのはプロとしてもかなり難しいと思うのですが、お見事、というほかないですね。
最初の「オートバイ」に、とくに惹かれました。

  • 投稿者: チョロ
  • 2008/10/09(木) 17:41:07
  • [編集]

「オートバイ」
よかったですねぇ。
なんともいえず、すかっとしました。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2008/10/09(木) 18:30:45
  • [編集]

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