fc2ブログ

タイム屋文庫*朝倉かすみ

  • 2008/11/28(金) 18:26:10

タイム屋文庫タイム屋文庫
(2008/05/22)
朝倉 かすみ

商品詳細を見る

時をまたいで仕掛けた
あの、恋のつづき。

亡くなった祖母の思い出がたっぷり染み込む家で、突然の思いつきで始めた「タイム屋文庫」。タイムトラベル専門の貸本屋というそのアイデアは、実はかつて置き去りにしてしまった恋のつづき。そこで彼女は、たった一人の客を待つつもりだったのだが……。
考えなしで抜け作の三十女が、心機一転をはかって繰り広げるロマンチックストーリー。どこか懐かしくて温かい、何度でも味わえる傑作です。
(すでにあちこちで噂になっている「タイム屋文庫」。その訳は本書にてどうぞお確かめください。きっと訪ねたくなりますよ)


舞台は小樽、それだけですでに情緒的な心持ちになる。しかも、柊子が十六歳の日に失くした恋のその後に出会うためだけに始めた貸し本屋に置かれているのは、タイムトラベルを扱う本や、DVDやCDばかりなのである。そしてお店は、ツボミさんという進取の気風に富んだおばあちゃんが住んでいた家をそのまま活かしていて、はじめて訪れてもなんとはなしに懐かしさを覚える空間なのだった。
主人公が抜け作の柊子であるゆえなのか、タイム屋文庫のレトロ感がそうさせるのか、物語り全体が夢とうつつを曖昧にいったりきたりしているような陶酔感に包まれているのが心地好い一冊である。


・     

はじまり

       1 黒猫のひとまたぎ

 ぱっ。市居柊子は目をあけた。天井を見、あたりを見回し、またのあいだにうずくまっている真っ黒に気がついた。腹筋に力を入れて首を起こす。真っ黒なのは猫だった。




V
V

TB
しんちゃんの買い物帳
粋な提案

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「タイム屋文庫」朝倉かすみ

タイム屋文庫(2008/05/22)朝倉 かすみ商品詳細を見る 祖母が死んだ。祖母が「おばあちゃん」から「仏さま」に変わった気がした。祖母の亡きあと...

  • From: しんちゃんの買い物帳 |
  • 2008/11/29(土) 23:34:46

タイム屋文庫 朝倉かすみ

タイム屋文庫(2008/05/22)朝倉 かすみ商品詳細を見る オブジェ制作は釼持耕平。装幀は大久保伸子。初出「ウフ.」。 柊子は亡くなった祖母・ツボ...

  • From: 粋な提案 |
  • 2008/11/30(日) 19:48:12

この記事に対するコメント

どこか懐かしくて温かい物語でしたね。
とても心地よかったです。

  • 投稿者: 藍色
  • 2008/11/30(日) 19:47:27
  • [編集]

柊子は周りの人にとても恵まれていてしあわせでしたね。
お元気なころのツボミさんのお話をもっともっと聞きたかったです。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2008/11/30(日) 20:28:11
  • [編集]

朝倉かすみ網

いくつかのアンソロジーでいいなぁと思っていた朝倉さん、「田村はまだか」でどーーんとこの「かすみ網」に引っかかってしまい、「肝、焼ける」「ほかに誰がいる」とすぐさま読みました。「タイム屋文庫」と並んで、どれもしっくりとよかったですよ。

  • 投稿者: チョロ
  • 2008/12/03(水) 05:51:56
  • [編集]

わたしは、これが初読みだったので
これから少しずつ読むのがたのしみです。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2008/12/03(水) 06:29:03
  • [編集]

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する