fc2ブログ

犬はどこだ*米澤穂信

  • 2008/12/11(木) 17:37:57

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)
(2005/07/21)
米澤 穂信

商品詳細を見る

何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所“紺屋S&R”が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。それなのに、開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして―いったいこの事件の全体像は?犬捜し専門(希望)、二十五歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。『さよなら妖精』で賞賛を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説。


大学を卒業し銀行に就職するまで、自分の思い描いたとおりのコースを進んできた紺屋(こうや)だったが、ものすごくひどいアトピー性皮膚炎を発症するという思ってもみなかった障害によって仕事を辞め、故郷にもどって調査会社を立ち上げることにしたのだった。社名の「紺屋S&R」はsearch&rescueの略である。そして、紺屋が探したいのは犬だった。しかしながら、友人の大南の紹介でやってきた初めての依頼者は、犬ではなくて人探しの依頼をもってきたのだった。
そして、やはり大南の紹介でやってきた第二の依頼である古文書の由来調べを、押しかけ社員の半田(ハンペー)に任せて、それぞれ調査を続けるうちに、思わぬ現実が明らかになり、調査は熱を帯びてくるのである。
結局犬探しは一度もすることなく物語は終わり、「紺屋S&R」が犬を探す日が来るかどうかは、はなはだ疑問なのである。厄介な依頼ばかりが舞い込みそうな予感が・・・。




はじまり

       Chapter 1

          二〇〇四年八月十二日(木)---八月十三日(金)

         1

 ねずみ色のロッカーと、ちょっとした振動でガラス戸ががたがた揺れる書棚。それだけしかなかった風景に、デスクとソファーとテーブルと壁掛け時計、観葉植物を運び込んだ。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する