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楽園 上下*宮部みゆき

  • 2008/12/16(火) 17:22:12

楽園〈上〉楽園〈上〉
(2007/08)
宮部 みゆき

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「模倣犯」事件から9年が経った。事件のショックから立ち直れずにいるフリーライター・前畑滋子のもとに、荻谷敏子という女性が現れる。12歳で死んだ息子に関する、不思議な依頼だった。少年は16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、それを絵に描いていたという―。



楽園 下楽園 下
(2007/08)
宮部 みゆき

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土井崎夫妻がなぜ、長女・茜を殺さねばならなかったのかを調べていた滋子は、夫妻が娘を殺害後、何者かによって脅迫されていたのではないか?と推理する。さらには茜と当時付き合っていた男の存在が浮かび上がる。新たなる拉致事件も勃発し、様々な事実がやがて一つの大きな奔流となって、物語は驚愕の結末を迎える。


『模倣犯』の前畑滋子の物語である。続編と言ってしまっていいのかどうかは多少迷うところはあるが、『模倣犯』の事件の後遺症を未だ引きずっている前畑滋子が、その事件とどう向き合い、どう決着をつけ、どう乗り越えて新たな一歩を歩き出すか、という物語でもあるのだろう。
上巻は、不思議な能力を持つという少年・等の母親・萩谷敏子からの依頼を受けて、ある事件を調べながら、前畑が自身の気持ちに踏ん切りをつけていく過程でもある。思いがけない要因が、とんでもないところに繋がり、ひとつひとつの点を結び付けていくのがこの上巻でもある。
下巻は、等に問題の絵を描かせるきっかけになった人物を探すうちに行き当たった、あおぞら会という子ども会を調べるところからはじまり、これまた思いもしない繋がりによって核心へと迫っていく過程が、前畑滋子や萩谷敏子、そして殺された土井崎茜の妹・誠子らの揺れ動く心情と共に描かれていて、ページを繰る手を止められなくなる。
あちこちに散らばった点と点が、いささか上手く繋がりすぎる気がしなくもないが、秘められていたことが暴かれるときというのは、こういうものなのかもしれないと思いもする。
茜のことを自業自得と言い切ってしまうにはあまりに切なく、土井崎夫妻の不甲斐なさに憤りを覚えながらも、誠子を想ってがんじがらめになっていく状況には同情を感じなくもない。誰が悪かったのか、どうすればよかったのか、ひとつの答えを出すのは難しすぎる。


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宮部みゆき【楽園】

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楽園(上)(下)  宮部みゆき

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楽園 宮部みゆき著。

≪★★★≫ 9年前の世間を賑わせたあの誘拐殺人事件に関わった、ライター前畑滋子の元へ持ち込まれた数枚の絵。 その中には、滋子が関わったあの忌まわしい事件の舞台となった山荘と、知るはずもないワインの瓶が描かれていた。 描いた少年は、他にも実の娘を殺害して遺?...

  • From: じゃじゃままブックレビュー |
  • 2008/12/24(水) 17:32:52

この記事に対するコメント

どうもあのライターの女性って好きになれないんですけど、でもすでに内容を忘れていて、なんだか事件の概要とっても気になってきました。

  • 投稿者: じゃじゃまま
  • 2008/12/24(水) 17:37:48
  • [編集]

『模倣犯』のときから、前畑滋子の評価は分かれていましたね。
自分の身と引き比べると、あまりにものめりこみすぎるところが遠い気がするのだけれど、この作品の彼女のその後の様子を見ると、決して強いだけの女性ではなかったのだと、親しみを感じたりもします。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2008/12/24(水) 18:15:22
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