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光*三浦しをん

  • 2008/12/22(月) 10:51:06

光
(2008/11/26)
三浦 しをん

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暴力はやってくるのではない。帰ってくるのだ。

理不尽をかいくぐり生きのびた魂に、安息は訪れるのか。
三浦しをん、渾身の最新長編。

天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花を救うため、彼はある行動をとる。二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた――。


何故「光」というタイトルをつけたのだろう、と訝しくなるほど、明るさとは無縁の物語である。
島という閉鎖的な場所で生まれ、限られた中ですべてを賄わざるを得ない少年期を過ごし、津波という不可抗力によってそれさえも奪われたわずかな者たちは、開かれた場所に出てもやはり自分という鎧の内側に閉じこもっているのだった。
読書中も、読後も、頭の中にはどうどうと押し寄せてくる津波の轟きが低く唸っているようで、島中を埋め尽くした泥に胸の中まで埋め尽くされたような重苦しさが残るのだった。

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