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オリンピックの身代金*奥田英朗

  • 2009/05/06(水) 13:52:00

オリンピックの身代金オリンピックの身代金
(2008/11/28)
奥田 英朗

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昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。


オリンピックの身代金は八千万円。
戦後十九年にして、目覚しい復興を遂げた首都東京。時はまさに国を挙げてオリンピックを待ち望む興奮に満ちていた。そんな表舞台の陰で、機械の歯車並みの、いやそれ以下の扱いで、人知れず死んでいく地方の貧農出の人夫たちの存在に、人々は目を瞑っているのだった。
そんな風にして兄を亡くした東大大学院生の島崎国男は、格差社会の不平等に憤り、兄や同じような境遇の人々の弔いの気持ちから、オリンピックを人質に取ることを考えるのだった。
物語の視点は、ひとつは島崎に、もうひとつは警察側に置かれ、ひと月あまり時間軸をずらしながら展開され、クライマックスに近づくに従って同軸により合わされていく。これが、一層緊張感を高めて効果的である。
おそらく読者は、いつの間にか島崎を応援している自分に気づくのではないだろうか。
この時代ほどではないだろうが、現代にも未だに東京と地方との経済格差は存在するだろう。そのことを思うとき、大胆にすぎると思われる島崎の行動に、切なさとやりきれなさを感じるのはわたしだけではないだろう。


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オリンピックの身代金 奥田英朗著。

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  • From: じゃじゃままブックレビュー |
  • 2009/05/12(火) 14:37:36

「オリンピックの身代金」奥田英朗

オリンピックの身代金(2008/11/28)奥田 英朗商品詳細を見る 昭和三十九年。米軍の士官宿舎が昨年日本に返還され、五輪選手村として使用するため...

  • From: しんちゃんの買い物帳 |
  • 2009/05/21(木) 23:14:02

・「オリンピックの身代金」奥田英郎

1964年。昭和39年。私が小学校高学年の時に東京オリンピックは開かれた。奥田英郎は昭和34年生まれ。5歳。かすかな記憶がある程度だろう。そこは作家。見事に当時の日本の空気を描いている。作家にかかれば、戦国時代でもあたかも自身が体験したかのように描ける...

  • From: 肩の力を抜いて |
  • 2009/11/13(金) 01:02:56

この記事に対するコメント

もしも島崎が東京で生まれ育ち、東大生だったら、こういう風にはならなかったはずですよね。秋田の貧しい家に生まれ、その中で東大まで進み、いろんな引け目もあったんじゃないでしょうか。都会と地方の格差を見て、地方の引け目、自分だけ東大に行った兄弟への引け目、労働者たちから見られている東大生の自分への引け目。
生真面目なゆえに、頭よすぎたゆえに?そこから彼の不幸が始まりましたね。
でも正直、島崎を応援してる自分がいたり、でもオリンピックばんざ~いって思う自分もいたり、まるで村田ですね。(苦笑)

  • 投稿者: じゃじゃまま
  • 2009/05/12(火) 14:42:04
  • [編集]

島崎の境遇
まったくそのとおりだと思います。

じゃじゃままさんも、応援していましたか…。
やはり、憎めないですよね。

次のオリンピックは、東京オリンピックの時代とはさまざまに違うのは明らかだけれど、それでもきっと似たようなことはきっとあるのだろうな、と思います。
裏でひっそり第二の島崎が現れたりしないとも限りませんね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2009/05/12(火) 16:35:34
  • [編集]

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