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さよならの扉*平安寿子

  • 2009/06/09(火) 17:24:26

さよならの扉さよならの扉
(2009/03)
平 安寿子

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彼は逝ってしまったけれどわたしとあなたは、ここにいる。社会経験まるでなしの本妻(48歳)と、デキる独身OLにして夫の愛人(45歳)が、夫の死をきっかけに対面。そんな女ふたりが織りなす奇妙な交流を、一滴の涙を添えてユーモラスに描く。


癌を宣告され、治療を拒んで53歳で逝った夫。死を目前にして、夫は5年間続いた愛人の存在と電話番号を妻に教えた。そして夫が息を引き取るまさにその時、妻は愛人に電話で夫の死を伝えたのだった。
そんな状況で愛人の存在を妻に知らせる夫の真意も、愛人に執拗に連絡を取り、友だちになりたいと言い続ける妻の心理も、どちらも理解できないし、共感もできないのだが、夫も妻も愛人も、本人たちさえも自覚していないであろうなにかを共有しているように感じられて、普通に考えれば気持ちのいいものではない妻の行動をも責める気持ちにはなれないのだった。死んでしまえばなんでも許されるとは決して思わないが、先に旅立っていった人が確かに自分たちに残したものを想うことは、許すとか許さないとか、憎むとか愛するとかいうこととは別のなにかであるような気もするのである。
なんとなくしみじみとさせられる一冊だった。




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「さよならの扉」平安寿子

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  • From: しんちゃんの買い物帳 |
  • 2009/06/15(月) 22:47:04

この記事に対するコメント

平ファン

私は安寿子ファンを自認、すべての著書を読んできましたが、新境地といえば新境地、彼女独自の毒気がないといえば毒気のない(少ない)作品でした(新型インフルエンザ並み)。
卓己の死によって、本妻と愛人が従来型のパターンで衝突するということを避けたのでしょうが、もうひとひねり欲しかった、というのは過剰な期待でしょうか?
もちろん人物造形も台詞も全体の構成もいいのです。

  • 投稿者: チョロ
  • 2009/06/10(水) 06:26:54
  • [編集]

たしかに、新境地といえば新境地、ですね。

著者がなにを伝えたいのかが、もうひとつわかりづらかったようにも思います。
もうひとひねり、ですね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2009/06/10(水) 06:39:15
  • [編集]

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