身の上話*佐藤正午

  • 2009/09/22(火) 13:19:02

身の上話身の上話
(2009/07/18)
佐藤正午

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この主人公の流され方に、自分は違うと言い切れますか。人間・人生の不可思議をとことん突きつめる、著者の新たな代表作の誕生。


主人公は、23歳のミチル、柳に風と流される性格である。だが、冒頭から語り手はミチルのことを「妻」と呼ぶ人物である。それが誰かはラスト近くなるまで判らない。ミチルの現在に至る事情をその人物が語るので、当然出来事はすべて過去のものであり、現在のミチルやほかの登場人物たちがどうなっているのかも定かではない。それが読む者になにがしかの不安を抱かせ、すべてが明らかにされるまで読むのを止められない心地にさせるのである。
元々のミチルの性格もあるが、ドミノ倒しのように次々と厄介ごとに見舞われ、放心するうちに自分の居場所さえも見失って行くミチルをみていると、その弱さと、どうにもならなさに愕然としてしまう。
ラスト間際でやっと安住の地を得たかに見えたが、それさえも砂上の楼閣だったとは・・・。自業自得と言ってしまえばそれまでだが、やりきれなさが残る一冊だった。

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この記事に対するコメント

けっこう後々まで引きずるいやな感覚が残りました
一時期の桐野夏生のような、始末のつけられないものを放り出すような・・・
でもこの著者は、かなり確信犯で「意図的に」こういう構成にしていますね
そこがまた悔しいところですが、いつまでも考えさせるというか「感染」させるにはピッタリの話でした

  • 投稿者: チョロ
  • 2009/09/24(木) 18:15:47
  • [編集]

>「感染」
まさにそんな感じでした。言い得て妙ですね。

完全に他人事としてみられない、というのか、小説の中の空気がじわりじわりと身の内に染み込んでくる厭な感じとでも言うのでしょうか。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2009/09/24(木) 19:38:10
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