圏外へ*吉田篤弘

  • 2009/10/08(木) 16:54:05

圏外へ圏外へ
(2009/09/16)
吉田 篤弘

商品詳細を見る

主人公の「カタリテ」=小説家が書き出しで行き詰まるうちに、自作の登場人物たちが勝手に語り始めたり、作者自らが作品の中に入り込んでいく、小説を書き続けることの喜び・苦しみを正面から描ききった意欲作。


503ページの大作である。とにかく分厚くて――軽いのだが――読むのに持ちにくくて疲れた。
物語自体は、吉田篤弘パワー全開といったところだろうか。作家が次に綴ろうとする物語に向き合う想いを語っているようであり、己の裡なる声に耳を澄ませ、そこに見える風景を見つめる物語であり、ただ単に執筆に行き詰って居眠りしながら見た夢の世界のようでもある。どれもみな間違いで、どれもみな正解なのかもしれない。
読者は、あっというまに遠い遠いところへと連れて行かれたと思うと、南新宿の路地裏に引き戻され、また一瞬にして「南」へと連れ去られて不可思議な体験をさせられる。かと思えば、円田(つぶらだ)くんと娘・音(おん)との解説めいたやりとりを見せられて、ここが本来の場所か、と思うのも束の間、またとんでもないところでとんでもない人物と出会っていたりするのである。
近くて遠く、遠くて近い一冊だった。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する