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うつくしい人*西加奈子

  • 2010/02/03(水) 19:19:46

うつくしい人うつくしい人
(2009/02)
西 加奈子

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他人の苛立ちに怯え、細心の注意を払いながら重ねていた日々を自らぶちこわしにした百合。会社を辞め、「ただの旅行」で訪れた島のリゾートホテルのバーにいたのは、冴えないがゆえに百合を安心させるバーテンダー坂崎と、暇を持て余す金髪のドイツ人、マティアスだった。美しい瀬戸内海の離島、そこしかないホテルで不思議に近づく三人の距離。地下には、宿泊客が置いていく様々な本が収められた図書室がある。本に挟まっていたという一枚の写真を探すため、ある夜、三人は図書室の本をかたっぱしから開き始める―。会社を逃げ出した女、丁寧な日本語を話す美しい外国人、冴えないバーテンダー。非日常な離島のリゾートホテルで出会った三人を動かす、圧倒的な日常の奇跡。


他人の目にどう映るかを気にしすぎるあまり自分を見失い、重く重くなってしまった蒔田百合。重さから逃れるために、四泊五日の一人旅に出かけ、雑誌で見て気に入った島のホテルで贅沢に過ごすはずだった。だが、ほんとうにいちばん気にしているのは、現在は引きこもり中の姉にどう思われるかなのだと気づく。近すぎる故に逃れられない家族という呪縛は、比類ないほど鬱陶しく、だが、なんと大切なものだったのか。ホテルのバーの冴えない中年バーテンダー、お金と時間が有り余る流暢な日本語を話す白人青年。惹かれ合うように出会った、やはり胸に重さを抱える彼らと過ごすうち、吸収するだけではなく置いていってもいいのだ、ぱんぱんになったらあふれ出させてもいいのだ、ということが身をもってわかり、少しだけ軽くなって帰途につく百合に、こちらもほっとさせられる。張り詰めていたものがほぐれる心地好さを味わえる一冊である。

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