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戦友の恋*大島真寿美

  • 2010/03/03(水) 11:14:22

戦友の恋戦友の恋
(2009/11/27)
大島 真寿美

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佐紀もそろそろ禁煙したら、と玖美子にしては珍しい忠告をした。いつもなら、うるさいなあと思ったはずなのに、神妙に頷き、まあね、あたしもやめようかなあとは思ってんのよね、と殊勝に答えると、そうしな、と玖美子は短く言った。病院へ行った方がいいよ、と今度は私が忠告した。行くよ、と玖美子は答えた。でも、結局行かなかった。行かないで死んでしまった―残された者の悲しみは誰にも癒せない。喪失の痛みを抱えて、ただただ丁寧に毎日を送ることだけ―。注目の作家が描く、喪失と再生の最高傑作。


表題作のほか、「夜中の焼肉」 「かわいい娘」 「レイン」 「すこやかな日々」 「遙か」

連作短編集の形を取っているが、全体を通してひとつの物語である。
同い年で、編集者と漫画家志望者として出会った玖美子と佐紀(あかね)。玖美子は病を得てあっけなく亡くなり、佐紀は玖美子が死につづけている間も独りで生きつづけなければならなくなった。圧倒的な喪失感と、それまでと変わらず押し寄せてくる日々のあれこれにもみくちゃにされながら、佐紀は少しずつ自らの生を生きはじめる。
号泣したり、泣き暮らしたりするのではなく、それまでどおりの日常を過ごしているように見えて、これほど大きな埋めようのない喪失感を描くとは、さすが著者である。深い深い空洞が、じわじわと胸に迫り、ひたひたと侵食されるような心地の一冊である。だが、それでも人は立ちあがれるものなのだということも改めて思わされるのである。




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じゃじゃままブックレビュー

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戦友の恋 大島真寿美著。

≪★★★≫ 私たちは友だちじゃない。 まったく芽の出ない漫画家志望の山本佐紀こと山本あかね。 絵は下手だけど原作者としての道を示唆してくれた新人編集者、石堂玖美子。 二人は、ただの友だちではなく、互いが互いの道を進むために一緒に闘い、支え合いってきた戦友?...

  • From: じゃじゃままブックレビュー |
  • 2010/03/04(木) 12:04:05

この記事に対するコメント

私は今までの大島作品を越えるものを感じられなかったんですよね。
どちらかというと女子高生くらいの話の方が好きかな~って感じで。でも物語の中に大和湯の美和ちゃんが出てきたのはとっても嬉しかったです。

私は美和ちゃんが主人公だった「ほどけるとける」が大好きだったので。

  • 投稿者: じゃじゃまま
  • 2010/03/04(木) 12:07:18
  • [編集]

そうそう、美和ちゃん。
「ほどけるとける」よかったですね。

何気ないところで、物語通しが繋がっているのも、くすぐったいような懐かしさがあります。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2010/03/04(木) 13:42:51
  • [編集]

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