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岸辺の旅*湯本香樹実

  • 2010/03/20(土) 06:51:20

岸辺の旅岸辺の旅
(2010/02)
湯本 香樹実

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なにものも分かつことのできない愛がある。時も、死さえも。あまりにも美しく、哀しく、つよい至高の傑作長篇小説。


三年前に、何の前触れもなくいなくなった夫・優介が、ある夜、瑞希がごま餡入りの白玉を作っているところへ帰って来た。海の底で蟹に食べ尽くされ、ここに帰って来るのに三年もかかってしまった、という優介と共に、瑞希はその道筋を逆にたどる旅にでる。一緒に暮らしているときには見えなかった、優介の一面を知り、気づかなかった趣向に気づき、いつまた失うかもしれないという不安と心細さに囚われながらも、幸福に満たされた日々を送るのである。
怖れでも後悔でもなく、流れるままに優介について旅をする瑞希の心は、「生きたい」と優介とこのまま一緒にいたい、すなわち「死にたい」のあわいで揺らいでいるようにも見える。だが、旅を終えた瑞希の心は、隙間を優介で満たされ、いない彼を想うのとは別の想いで、新しい道を選び取ったのだと思える。哀しくて、淋しくて、あたたかさに満ちた一冊だった。

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