田村はまだか*朝倉かすみ

  • 2010/04/15(木) 17:21:52

田村はまだか田村はまだか
(2008/02/21)
朝倉 かすみ

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2009年吉川英治文学新人賞受賞作。
 かつて「孤高の小学六年生」と言われた男を待つ、軽妙で感動の物語。

深夜のバー。小学校のクラス会の三次会。四十歳になる男女五人が友を待つ。
 大雪で列車が遅れ、クラス会同窓会に参加できなかった「田村」を待つ。
「田村」は小学校での「有名人」だった。有名人といっても人気者という意味ではない。その年にしてすでに「孤高」の存在であった。
 貧乏な家庭に育ち、小学生にして、すでに大人のような風格があった。

 そんな「田村」を待つ各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち。
 今の自分がこのような人間になったのは、誰の影響なのだろう----。
 四十歳になった彼らは、自問自答する。

 それにつけても田村はまだか? 来いよ、田村。

 酔いつぶれるメンバーが出るなか、彼らはひたすら田村を待ち続ける。

 そして......。

 自分の人生、持て余し気味な世代の冬の一夜を、軽快な文体で描きながらも、ラストには怒濤の感動が待ち受ける傑作の誕生。


  第一話  田村はまだか
  第二話  パンダ全速力
  第三話  グッナイ・ベイビー
  第四話  きみとぼくとかれの
  第五話  ミドリ同盟
  最終話  話は明日にしてくれないか


「田村はまだか」と誰もが待つものの、田村はなかなか現れない。そのうち、「孤高の小学六年生」と言われた田村の思い出話になり、田村を待つ彼らのエピソードが語られ、それぞれが自分の裡に来し方行く末を問いかけることになる。そして話にひと区切りつくたびに、「田村はまだか」と誰かが言うが、それでも田村は現れない。一体田村はこの物語に登場するのだろうか、最後まで登場せずに終わるのではないのか、と読者が危ぶむころ、交通事故に遭い、重症だと連絡が入る。
田村はどんなやつかと問われ、田村は田村でしかない、と言われる田村に会いたい。札幌・ススキノのスナック・バー・「チャオ!」のマスター花輪春彦でなくともそう思う。最終話のタイトルにもなっている田村のつぶやきが泣ける。そう、最終話になってやっと登場するのである。そしてその後も、それぞれの日常を過ごす彼らだが、田村を待った夜を境に、きっとなにかが変わったのだろう。

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この記事に対するコメント

まああただよ

なんだか「ゴドーを待ちながら」みたいだな、などと思いながら
思わず入れ込んで読んでしまいました
それからは遅咲き作家・朝倉かすみフリークに
しかし、最初のインパクトが大きかったのか
どうも「田村…」を越えるものに巡り合えません

  • 投稿者: チョロ
  • 2010/04/19(月) 18:00:00
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変わった趣向の一冊でしたね。

『タイム屋文庫』も、わたしは好きです。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2010/04/19(月) 18:47:01
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