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スコーレNo.4*宮下奈都

  • 2010/05/24(月) 10:20:09

スコーレNo.4スコーレNo.4
(2007/01/20)
宮下 奈都

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どうしても忘れられないもの、拘ってしまうもの、深く愛してしまうもの。そういうものこそが扉になる―。ひとりの女性への道のりを描く書下ろし長編小説。


古道具屋の三姉妹の長女として生まれた麻子の物語である。美しく生まれ、自分の思ったままを自然に口にできる次女七葉(なのは)、年離れて生まれたお豆さん(みそっかす)の紗英は屈託がない。麻子はと言えば、いつもその先を考えてしまい、思ったままに行動することができず、自分に自信を持てずにいる。そんな麻子が麻子のままでいていいのだと思えるようになるまでの道筋に――ひとつひとつには劇的な要素はなにもないのだが――静かに胸打たれる。七葉は七葉で、紗英は紗英でもがく様子も垣間見えるのだが、これはあくまでも麻子の物語であり、麻子の目を通して見る七葉であり紗英なのだ。その人なりにありようは違うだろうが、おそらく誰もが大人になるために通らなくてはならない道なのだろう。それが激することなく淡々と描かれているのが、その道をかつて歩いたことのある身には心地好い一冊だった。

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