小さいおうち*中島京子

  • 2010/06/20(日) 20:52:31

小さいおうち小さいおうち
(2010/05)
中島 京子

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赤い三角屋根の家で美しい奥様と過ごした女中奉公の日々を振り返るタキ。そして60年以上の時を超えて、語られなかった想いは現代によみがえる。


  第一章  赤い三角屋根の洋館
  第二章  東京モダン
  第三章  ブリキの玩具
  第四章  祝典序曲
  第五章  開戦
  第六章  秘策もなく
  第七章  故郷の日々
  最終章  小さいおうち


タキが、女中奉公をしていたころのことを手記にしながら思い出している、という形で語られる物語である。そしてそれを包むようにあるのは、タキ亡きあとその手記を託された甥の健史が伯母・タキが女中として奉公していた赤い屋根の家のことを知ろうとする姿である。思いで物語が入れ子になっているとでも言えばいいだろうか。
タキの思い出話は、キラキラと輝いていて、それがたとえ戦争中のことであってもとても幸福そうに見受けられる。タキ自身がきっと輝いていたひとときであったのだろうと察せられる。女中としての気働きや、物が豊富にない時代の食卓の工夫といったことごとが、物のあふれた現代よりもずっと豊かに思えるほどである。タキの控えめな語り口もまた味わい深さを増している。最終章をも含めて、とても贅沢で味わい深い一冊だった。

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