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玉蘭*桐野夏生

  • 2010/07/04(日) 09:11:36

玉蘭 (朝日文庫)玉蘭 (朝日文庫)
(2004/02/14)
桐野 夏生

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張りつめた東京での生活に疲れ果てた有子は、逃げるように上海へとやって来た。枯れた“玉蘭”によって眠りを遮られ、別れた恋人への愛憎の深さに慄いた夜、彼女の前に大伯父の幽霊が現れる。70年前、この地で船乗りとして生きていた大伯父もまた、1人の女性への断ち切れない想いを抱いていた。人々の活気みなぎる土地上海を舞台に、2組の男女が織り成す恋愛模様。深い恋慕の情は時を越え、現代と過去が交差する。


  第一章  世界の果て
  第二章  東京戦争
  第三章  青い壁
  第四章  鮮紅
  第五章  シャングハイ、ヴェレ、トラブル
  第六章  幽霊
  第七章  遺書


不思議な、そして奥の深い物語だった。東京での命をすり減らすような日々に疲れ果て、上海へやってきた有子と、いまは亡き伯父の質(ただし)――著者自身の祖母の弟がモデルになっているという――とが主人公となり、時に不思議に交わりながら別々の時代を生きている。上海、広東という日本にはない雰囲気のなかで、有子の世界も質の世界も次第に角をなくして丸みを帯び、崩れかけていくように見える。冒頭に描かれる玉蘭が象徴的である。あとがきに、質のことを書きたかったとあるように、物語の始まりは有子であるが、彼女の物語は完結せず、ラストは質で結ばれている。物語後もつづいている有子の生き様も気になる。気だるい読後の一冊である。

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