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紫のアリス*柴田よしき

  • 2010/07/29(木) 13:54:03

紫のアリス (文春文庫)紫のアリス (文春文庫)
(2000/11)
柴田 よしき

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不倫を清算し会社を辞めた紗季は、夜の公園で男の死体と「不思議の国のアリス」のウサギを見る。果たして幻覚か?引越したマンションで、隣人の老婦人のお節介に悩む紗季に元不倫相手が自殺したという知らせが。一方「アリス」をモチーフにした奇妙なメッセージによって、十五年前のある事件の記憶が蘇る。


  第一章  三月ウサギ
  第二章  奇妙な帽子屋
  第三章  お茶会の午後
  第四章  悲劇
  第五章  白い薔薇・赤い薔薇
  第六章  思い出の隙間
  第七章  鏡の中へ
  第八章  紫のアリス
  エピローグ  鏡の国のアリスへ


子どものためのおとぎ話と思っていたら、本来の姿は大人に向けての思わせぶりな物語だった、という風な背筋がゾクッとするような趣もある。どこから迷いこんだのか、いつから迷いこんでいたのか、夢なのか現なのか手探りするもどかしさの中を読み進む。ひとつ光が見え、真実を掴んだと思うと、するすると手を逃れて真実と思われたものは遠ざかっていき、迷いさまよいながら何度も裏切られる。最後の最後に本物の出口だと思ったものさえ、まやかしなのかもしれないのである。迷いつづける一冊だった。

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