fc2ブログ

声出していこう*朝倉かすみ

  • 2010/09/06(月) 10:40:23

声出していこう声出していこう
(2010/08/19)
朝倉 かすみ

商品詳細を見る

平凡な街の地下鉄駅構内で通り魔事件が発生。怪我人、十数名。犯人はそのまま逃走、まだ捕まっていない。

 その事件の余波で部活が休みになった男子中学生・マサノリは、母親に頼まれて大型スーパーに買い物に行き、小学校の同級生・西田とばったり会う。西田には「うざキャラ」のためかつて軽くいじめられた過去があった。
 
 その西田に「一緒に事件現場見に行かない?」とマサノリが誘われたことから、この物語は始まるのだが......。

 作家に恋する女子高生。自称「モテ男」の家業手伝い(ラーメン屋)兼自宅浪人生。4歳のとき世界の国旗と国名、首都が言えたことが唯一の心のよりどころの 46歳独身男などなど、この街に住むうだつの上がらぬ6人の老若男女が、走って、恋して、自惚れて、戸惑って、言い訳して、嘆く。

 真犯人は、誰だ?  私は、何者だ?

 爆笑と感嘆の会心作。


  第一章  声出していこう
  第二章  シクシク
  第三章  みんな嘘なんじゃないのか
  第四章  お先にどうぞ、アルフォンス
  第五章  大きくなったら
  第六章  就中――なかんずく――


同じ町に住むまったく無関係だが、ほんのちょっぴりすれ違ったり交わったりしている人たちの日常の屈託を描いた連作。前章の最後の一文が次の章の冒頭の一文になり、しりとりのように繋がってもいる。
さまざまな年代、さまざまな境遇、男、女、ゲイ。だが彼らには一様にこんなはずではないという思いが胸に淀んでいる。いわゆる「うだつが上がらない」のである。吐露される彼らの胸のうちの思いにうなずき膝を打つ読者は多いことと思う。というか自分の中に思い当らないという方が少ないことだろう。読みながら、「そうそう、わかる。でももっと頑張ってよ」とついはっぱをかけたくなるのである。たぶん自分のお尻を叩いている、ということなのだろう。情けなくもどかしいが、ちょっぴりスカッとしなくもない、愛おしい一冊である。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する