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夏目家順路*朝倉かすみ

  • 2010/11/06(土) 17:01:45

夏目家順路夏目家順路
(2010/10)
朝倉 かすみ

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夏目清茂七十四歳、本日脳梗塞のためめでたく昇天いたしました。「どこにでもいるただひとり」の男の一生を、一代記とは異なる形で描いた傑作長編小説。


前半はこの物語の主人公・夏目清茂の取り立てて特別ではないが波も立ち人並みに苦労もしたが、まあまあそれなりに幸福でもある人生が描かれているが、突然脳梗塞で亡くなってからは、家族や親族や友人の目線で清茂がらみのあれこれが語られていく。とは言っても、みな清茂のことを考えると思い出すのは自分のことで、清茂と同じ時を生きていた自分のあれこれが思い出されてくるのである。そして、人がひとり亡くなったばかりの妙にぽっかりとした意識のありようがとてもリアルに描かれていて、自分が近しい人を亡くしたような空白が一瞬胸に広がるのだった。それらすべてが淡々と書かれているのがかえって夏目清茂がもういないのだということをしみじみと思わせる一冊である。




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時折書房

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朝倉かすみ『夏目家順路』

夏目家順路著者:朝倉 かすみ文藝春秋(2010-10)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る 「たかが&されど」構造の中の一代記。 内容(「BOOK」データベースより) 夏目清茂七十四歳、本日脳梗塞のためめでたく昇天いたしました。「どこにでもいるただひとり」の男の一生を、?...

  • From: 時折書房 |
  • 2010/11/13(土) 12:45:32

この記事に対するコメント

TBさせていただきました。
たしかに「空白」の感じがうまく出ていたと思います。
そして、
>とは言っても、みな清茂のことを考えると思い出すのは自分のことで
ほんとうに、そのとおりで、そこが、むしろ、いいリアリティを醸し出していたように感じます。

  • 投稿者: 時折
  • 2010/11/13(土) 12:48:12
  • [編集]

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