灰色の虹*貫井徳郎

  • 2010/11/18(木) 09:15:19

灰色の虹灰色の虹
(2010/10)
貫井 徳郎

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身に覚えのない殺人の罪。それが江木雅史から仕事も家族も日常も奪い去った。理不尽な運命、灰色に塗り込められた人生。彼は復讐を決意した。ほかに道はなかった。強引に自白を迫る刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。七年前、冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。ひとりの刑事が被害者たちを繋ぐ、そのリンクを見出した。しかし江木の行方は杳として知れなかった…。彼が求めたものは何か。次に狙われるのは誰か。あまりに悲しく予想外の結末が待つ長編ミステリー。


事件の捜査や裁判のあり方に疑問を抱かせる一冊である。身に覚えのない罪で罰せられる者の魂の訴えは、ほんとうにここまで権力側には通じないものなのだろうか。確固たる自分自身というものを見失いふらふらと自白に逃げてしまう精神状態に陥るまで過酷なものなのだろうか。想像することしかできないが、背筋が凍る心地である。復讐を肯定するわけにはいかないが、心情的にはどうしても江木に肩入れしてしまう。本作では山名という江木の犯罪にほんの少しでも懐疑的な刑事の存在によって、(手遅れだったとは言え)江木の無念にほんの僅かではあるが晴れ間がのぞいた感もあるが、現実だったらそうはいかず、取り返しのつかない誤った判決を何代にも亘って引きずらざるを得ないことの方が圧倒的に多いのだろう。
どんよりと重い読後感であるが、まったくの他人事ではいられない思いも残る。ずしんとやりきれない一冊である。




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じゃじゃままブックレビュー

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灰色の虹 貫井徳郎著。

≪★★★★☆≫ 冤罪によって人生を滅茶苦茶に狂わされた男には、復讐は権利か。当たり前の行為で神さえも背中を押してくれるのか。 江木雅史は、たまたまその日上司と口論になったせいで、たまたま上司が何者かに殺されたせいで、疑われ、そのまま有罪になってしまった。…

  • From: じゃじゃままブックレビュー |
  • 2011/05/29(日) 23:06:48

この記事に対するコメント

どうしても江木の味方になってしまいますよね。伊佐山と証言をした雨宮は当然といっていいかも、って憤慨しながら読んでました。(爆)
そして雨宮だけ助かるのが許せないくらい。
本当の真犯人はどこにいたのでしょう。綾部は殺されなくても、きっと早いうちにヤクザの言いなりになって身を滅ぼしてましたよね。

  • 投稿者: じゃじゃまま
  • 2011/05/29(日) 23:13:21
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まったくもってやり切れず、憤りを抑えられない一冊でした。
冤罪って、きっとニュースになっているよりもずっと多いのだろう、と思わされますね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2011/05/30(月) 06:20:59
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