温かな手*石持浅海

  • 2010/12/05(日) 21:15:05

温かな手温かな手
(2007/12)
石持 浅海

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大学の研究室に勤める畑寛子の同居人・ギンちゃんは名探偵。サラリーマンの北西匠の同居人・ムーちゃんも名探偵。人間離れした二人は、彼らが遭遇した殺人事件や騒動を、鮮やかに解き明かす!一風変わった名探偵とそのパートナーが活躍する、著者渾身の連作集。


表題作のほか、「白衣の意匠」 「陰樹の森で」 「酬い」 「大地を歩む」 「お嬢さんをください事件」 「子豚を連れて」

正統派のミステリであり、ヒューマンドラマでもある。唯一ほかの作品と違うのは探偵役が――人間の姿をして人間としての社会生活を送ってはいるが――人間ではないということだろう。人間の生命エネルギーを栄養源として生きている生命体なのだ。パートナーに選ばれた者はいくら食べても余剰エネルギーを吸い取ってもらえるので太ることはないのである。なんと羨ましいことか。それはさておき、畑寛子と暮らすギンちゃんは、外見も内面もいい男であり、観察眼の鋭い名探偵でもある。事件現場を見ただけで辻褄の合わない部分を見つけ、謎を解き明かしてしまうのである。何作かはアンソロジーで読んだことがあったが、そのときの印象のままのやさしい温かさが漂う連作集だが、ただほのぼのするだけではない哀愁のようなものも感じられるのは、やはり異種間交流の哀しさゆえだろうか。ギンちゃんの妹ムーちゃんも登場し、やるせない結末になりそうなところをうまい具合に救っている。最後の最後でタイトルの二重の意味に気づかされた一冊でもある。

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