ほかに誰がいる*朝倉かすみ

  • 2011/02/02(水) 14:27:47

ほかに誰がいるほかに誰がいる
(2006/09)
朝倉 かすみ

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あのひと=天鵞絨からのメールを読み返した。耳をすませた。細く、高めで、わずかに鼻にかかり、語尾に余韻を残す声。それが、あの人の声。ほかに誰がいる? 私の心をこんなに強くしめつける存在が…。書き下ろし長編小説。


読みはじめは普通の恋愛小説だと思った。だが、すぐにそうではないとわかる。えりがこれほどまでに強く想い執着するのは同級生の少女・れいこ(=天鵞絨)なのだった。純粋すぎる想いはときとして人から理性を奪い常識をないものにする。えりの日々はすべて天鵞絨のためにあり、天鵞絨のほかに価値を見出すことができないほどなのだった。冷静に見れば家族や周囲の人々をどれほど哀しませていることか、とも思うが、この物語はそんなことさえ超越しているようである。一歩間違えれば、いやもう完全にストーカーと言ってしまっていいようなえりの執着ぶりであるが、眉を顰める代わりにそっと応援している自分に気づくのもまた怖いものである。一途で不穏な一冊である。

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