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人質の朗読会*小川洋子

  • 2011/04/27(水) 18:36:16

人質の朗読会人質の朗読会
(2011/02)
小川 洋子

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遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと見張り役の犯人、そして…しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。


何より設定が突飛である。地球の反対側のとある国で遺跡めぐりをしていた日本人観光客が反政府ゲリラの襲撃を受け人質になった。救出作戦もむなしく人質は全員犯人が仕掛けたダイナマイトの爆発によって死亡した。そんな哀しい事件のあとで公開された、人質たちが自ら書いた話を朗読する声による彼らの物語なのである。年齢も性別も立場もばらばらな人質たちの語る話は、ごく個人的なことでありながら静かで深いところへと分け入るような共通の雰囲気を持ち、聴く者の胸にまっすぐに入ってくるのである。語られる題材も語り口もさまざまなのに、人質であるという運命の下で語られるからなのかどれもとても大切なことのように思われて、胸がしんとするのである。静かで厳かで滋味深い一冊である。

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この記事に対するコメント

不思議な小説を相変わらず書いてくれますね
にじみ出る地下水のように渇きを癒してくれます

この人の弱点は他人の悪口を云えないところで
登場人物を通じても一貫しているという
類まれな人のよさです。こりゃ強みかな?
それにしても定型をもたない作家なのに
小川洋子が書いた、とわかるのはなぜでしょう?

  • 投稿者: チョロ
  • 2011/04/28(木) 12:25:29
  • [編集]

おっしゃること
いちいちうなずかされます。

きっと強みだとわたしは思います。

設定は突飛なことが多いのだけれど
物語はあまりにも深く静かで
あたたかい冷たさの中に浸っているような心地になります。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2011/04/28(木) 14:07:56
  • [編集]

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