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女中譚*中島京子

  • 2011/05/21(土) 21:09:53

女中譚女中譚
(2009/08/07)
中島 京子

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昭和初期の林芙美子、吉屋信子、永井荷風による女中小説があの『FUTON』の気鋭作家によって現代に甦る。失業男とカフェメイドの悪だくみ、麹町の洋館で独逸帰りのお嬢様につかえる女中、麻布の変人文士先生をお世話しながら舞踏練習所に通った踊り子……。レトロでリアルな時代風俗を背景に、うらぶれた老婆が女中奉公のウラオモテを懐かしく物語る連作小説集。


「ヒモの手紙」 「すみの話」 「文士のはなし」

それぞれ、林芙美子、吉屋信子、永井荷風に捧げられた物語であり、かつ、いまは年老いた「すみ」が自分語りをするという趣向の連作になっている。すみが若かりしころの東京の風物に、それを語っている現代の東京の風物や事件が入り交じっているところに妙なリアル感がある。歴然と階級の差があったころの日本(東京)の閉塞感と未熟さ、その時代を生きる人びとの意識などが「すみ」の語り口から伝わってきて思わず惹きこまれる。日本がまだまだどうにでもなれる可能性を持っていたよき時代を感じさせられる一冊である。

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