月の上の観覧車*荻原浩

  • 2011/06/24(金) 09:12:08

月の上の観覧車月の上の観覧車
(2011/05)
荻原 浩

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守れるはずもないことを、いくつ約束したのだろう。逃げ出した故郷、家族に押しつけた身勝手な夢。いつだってその残酷さに、気付かぬわけでは決してなかった―。月光の差し込む観覧車の中で、愛する人々と束の間の再会を遂げる男を描いた表題作ほか、繰り返せない時間の哀歓を描く著者最高の傑作短篇集。


表題作のほか、「トンネル鏡」 「金魚」 「上海租界の魔術師」 「レシピ」 「胡瓜の馬」 「チョコチップミントをダブルで」 「ゴミ屋敷モノクローム」

どれも胸を締めつけられるような切なさを内包した八つの物語である。取り戻せないからこその後悔や郷愁、過去のあるときへと飛ばす思いのどうしようもなさが見事である。そしてまた今作でも荻原さん=おばさん説が浮上するのだった。ご本人の講演会に伺ったことがあるので男性だということは重々承知しているが、それでもなお女性――ことに中年女性――の心情を描いて妙である。ときにどきりとさせられるほどなのである。どういうことなのだ、とご本人に問いたいくらいである。高いところは苦手なので観覧車にも自分から乗りたいとは思わないが、月の出ている夜になら乗ってみてもいいかもしれない、などと思ってしまう一冊である。

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