そこへ行くな*井上荒野

  • 2011/07/19(火) 13:52:23

そこへ行くなそこへ行くな
(2011/06/24)
井上 荒野

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夫婦同然に暮らしてきた男の秘密を知らせる一本の電話(『遊園地』)。バスの事故で死んだ母はどこへ行こうとしていたのか(『ガラスの学校』)。中学の同窓生達が集まったあの部屋の、一夜(『ベルモンドハイツ401』)。「追っかけ」にあけくれた大学生活、彼女の就職は決まらない(『サークル』)。引っ越し先の古い団地には、老人ばかりが住んでいた(『団地』)。貸しグラウンドの女事務員が、なぜ俺の部屋を訪ねて来るのか(『野球場』)。母の入院先に、嫌われ者の同級生も入院してきた(『病院』)。行くつもりはなかった。行きたくもなかった「場所」へ―全七編収録。


タイトルが秀逸である。「そこへ行くな」と言われても――言われるが故かもしれないが――吸い寄せられるようにいつのまにかそこへ行くしかなくなってしまうようなことが、生きているとどれほど多くあることか。行くまい、行くまいと思うほどにがんじがらめにされてゆくのである。頭では行ってはいけないと判っているのに、である。その場所には自分にとって良いことなどひとつもないことも充分過ぎるほどわかっているのになお、である。なんと恐ろしい七編であろうか。目を瞑ろうとしてきたことをつい凝視してしまいそうになる一冊である。

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