ラプソディ・イン・ラブ*小路幸也

  • 2011/08/05(金) 11:14:54

ラプソディ・イン・ラブラプソディ・イン・ラブ
(2010/10/21)
小路 幸也

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ろくでなしでも、世間は名優と呼んでくれる。役者とはそういう職業だ。山と海に囲まれた、とある町の古い日本家屋。かつてそこは、日本の映画界を支えてきた笠松市朗が、愛する家族と過ごした家だった。笠松の息子、俳優・園田準一、笠松の前妻であり女優だった園田睦子、そして人気俳優で、笠松の二番目の妻との間に生まれた岡本裕。岡本の恋人である、人気女優の二品真里。バラバラになっていた彼ら五人が笠松の家に集まった。彼らの葛藤と思いが交錯するドラマの幕がいま開く。みな役者という彼らが、ひとつ屋根の下展開していくドラマ。「ラプソディ・イン・ラブ」――監督、紺田がつけたタイトルだ。彼らの言葉は、台詞か、真実か……。「東京バンドワゴン」シリーズの著者が描く家族の肖像。


映画なのである。物語を通していつもカメラが回っているわけではないが、久しぶりに集まった家族――のようなもの――の普段の暮らしをそのまま撮っているのである。それでもこれは単なる記録映画ではない。そんな味気ないものではないのである。監督から唯一要求された「それぞれが爆弾を持つこと――投下するかしないかは別として」という課題を抱え、それぞれが家族の中での自分の役割を果たすべく演技をしているのである。どれほど自然に見えたとしても、カメラが回っている限りそれは演技なのだ。なぜなら彼らは俳優だから。そして、演技だからこそ滲み出てくる本音も本質もそこにはあって、家族――のようなもの――でありながらだんだんと家族になっていく様子がカメラに収められていくのである。俳優でもなんでもない普通の家族も実は同じように作られていくのではないかと、ふと思わされる。意識するしないに関わらず家族のなかの自分の立場という演技をするうちに自ずと家族になっていくのではないだろうか。不思議な設定だが、心温まるひとときを過ごせる一冊である。

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