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闇の喇叭*有栖川有栖

  • 2011/09/24(土) 17:17:58

闇の喇叭 (ミステリーYA!)闇の喇叭 (ミステリーYA!)
(2010/06/21)
有栖川 有栖

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平世21年の日本。第二次世界大戦後、ソ連の支配下におかれた北海道は日本から独立。北のスパイが日本で暗躍しているのは周知の事実だ。敵は外だけとはかぎらない。地方の独立を叫ぶ組織や、徴兵忌避をする者もいる。政府は国内外に監視の目を光らせ、警察は犯罪検挙率100%を目標に掲げる。探偵行為は禁じられ、探偵狩りも激しさを増した。そんな中、謎めいた殺人事件が起きる。すべてを禁じられ、存在意義を否定された探偵に、何ができるのか。何をすべきなのか?


冒頭、戦争の話で、ちょっと苦手だなぁと思ったが、それは前振りだけでそれにつづく物語は一応平和な世界の物語である。だが、戦争中から現実とは少しずつずれて、わたしたちが過ごしている日本とは少しずつ道を別っていったのだった。領土のこと然り、法律のこと然り、言葉遣いのこと然り、である。こちらの世界のわたしたちから見るとなんとも不自由なことである。そんななかでも高校生たちは恋をし、未来の夢を語らうのである。物語の世界では私立探偵は罪であり、その探偵を父に持つ「ソラ」こと空閑(そらしず)純が主人公である。大阪から逃げるようにしてやってきた奥多岐野で、殺人事件が起き、友人の母親が疑われたのをきっかけにソラは事件の謎を解こうとし始めた。両親譲りの推理力で真相に肉薄するのだが、中央警察の刑事に監視されていることにはまったく気づかなかったのだった。謎解きも興味深いが、青春物語としても愉しめる。だが、この結末はあまりにも切な過ぎる。有栖川さん、YAなのにこの結末ですか、と泣きつきたい一冊でもある。

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