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モナ・リザの背中*吉田篤弘

  • 2011/12/03(土) 16:56:07

モナ・リザの背中モナ・リザの背中
(2011/10/22)
吉田 篤弘

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ある日、訪れた美術館で、展示中の「受胎告知」の世界に迷い込んでしまい…。絵の中に迷い込んだ男の冒険奇譚。


曇天先生は五十歳を迎えてからどうもヘンである。上野の美術館で絵を鑑賞していたはずなのに、うっかり絵の中に入り込んでしまったり、大学の研究室の助手アノウエくん(先生の命名であり、実はイノウエくん)と人形焼を食べていたはずがいつのまにか異世界をさまよい歩いていたりするのである。絵の中の世界では振り向くことができず、ひたすら前を前を目指して歩くのである。そして行きついたところはまた別の絵の奥とつながっていたりする。時間も空間も飛び越えた旅と言えなくもないが、それにしても思考はぐるぐると渦を巻くように先へ進まない。しまいには、いつもと同じ日常を望んでいるのか、未体験の世界を冒険したいのか、自分でもわけが判らなくなってくるのである。要するに、五十歳になって、これまで生きてきた道のりと、これから最期へと向かう道のりについての思考の渦に読者が巻き込まれているだけのような気もしないではないが、誰にも先生を助け出すことはできないのである。軽妙だが深くもある一冊。

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