水の柩*道尾秀介

  • 2011/12/10(土) 17:18:21

水の柩水の柩
(2011/10/27)
道尾 秀介

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老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より“普通”を欲していた。文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。だが、少女には秘めた決意があった。逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。


タイトルのなんと哀しいことか。そして、普通に倦んだ逸夫の日々のなんと贅沢なことか。読み進めるごとに思い知らされるのである。クラスメイトの敦子、祖母のいく、両親だって、敦子の母、誰でもが何かしら重いものを胸に抱え、それでもそれを見せまいと、あるいはそれから逃れようと嘘をつく。人に、自分に。そんな人たちになにができるのだろう。逸夫が彼らのために考えたことが、彼らを救ったのかどうかはすぐには判らないが、滞っていた流れを動かすことにはなったのだろう。なにより、逸夫自身がさまざまなことを考えるきっかけにはなったのだ。人が生きていくには、平坦な道の方が少ないかもしれないが、それでも誰かをほんの少しでも笑顔にできる瞬間があれば、生きている甲斐があるのかもしれない、と思わされもする。胸に重いが、誰かに寄り添いたくもなる一冊である。



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笑う社会人の生活

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水の柩 道尾秀介著。

《★★★》 ある観光地。次々と旅館が経営難になっていくその町で、老舗旅館の息子、逸夫の母のいくと、そして同級生、敦子はある秘密を抱えて生きている。 いくが隠したい過去、

  • From: じゃじゃままブックレビュー |
  • 2012/08/30(木) 13:55:17

葬り去る、

小説「水の柩」を読みました。 著者は 道尾 秀介 今作も非ミステリーなドラマ色強い作品 とはいえ 最後まで読ませますね ストーリー運びの巧さ、文章の美しさ 流石です 家族の問題

  • From: 笑う社会人の生活 |
  • 2013/08/28(水) 18:25:41

この記事に対するコメント

タイトルがすごいですよね。物語とイメージがぴったりで。
おばあちゃんの住んでいた村そのものや、彼らが投げた人形に託した思いとか。
道尾さんは最近こういうの多いですね。

  • 投稿者: じゃじゃまま
  • 2012/08/30(木) 13:57:56
  • [編集]

道尾さん、この路線で行くのでしょうか。

タイトルをつけるのってとても難しいと思うけれど、読後に改めて見ると、秀逸ですよね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2012/08/30(木) 17:03:21
  • [編集]

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