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ホテル・ピーベリー*近藤史恵

  • 2011/12/11(日) 17:21:30

ホテル・ピーベリーホテル・ピーベリー
(2011/11/16)
近藤 史恵

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不祥事で若くして教師の職を追われ、抜け殻のようになっていた木崎淳平は、友人のすすめでハワイ島にやってきた。宿泊先は友人と同じ「ホテル・ピーベリー」。なぜか“滞在できるのは一度きり。リピーターはなし”というルールがあるという。日本人がオーナーで、妻の和美が、実質仕切っているらしい。同じ便で来た若い女性も、先客の男性3人もみな、日本人の旅行者だった。ある日、キラウェア火山を見に行った後に発熱した淳平は、和美と接近する。世界の気候区のうち、存在しないのは2つだけというこの表情豊かな島で、まるで熱がいつまでも醒めないかのごとく、現実とも思えない事態が立て続けに起こる。特異すぎる非日常。愛情、苦しみ、喜び、嫉妬―人間味豊かな、活力ある感情を淳平はふたたび取り戻していくが…。著者渾身の傑作ミステリー。


ハワイ島のヒロという田舎にあるホテル・ピーベリー。滞在は三ヶ月まで、そして一度きり。リピーターは受けつけない。それだけで充分いわくあり気である。さらに、オーナーの日本人夫婦のうち、ホテルの世話をするのは妻の和美のみ、夫の洋介は朝早くから夜まで町のカフェで・WAMIで働いている。ホテルに帰ってくるときも無愛想そのものなのである。宿泊客同士も、経歴など個人的なことは詮索せず、その場限りの関係から踏み込むことはない。そんななか、宿泊客がたてつづけに事故で亡くなる。割り切れないもやもやを抱えたまま、淳平も一度は帰国するが、四ヵ月後にふたたびハワイに渡ることになる。そこで、思ってもみなかった真相が明らかにされる。と同時に、いわくあり気なホテルの方針も腑に落ちるのである。なにもしないで時を過ごすことを罪悪と思わずに済むヒロでの生活は、淳平にとってはわずかな期間となったが、彼の何かを変えたのだろうか。彼が抱える問題は何一つ解決されてはいないが、きちんと考えて前へ進めるきっかけになったのならいいな、と思わされる。大らかさと冷酷さ、諦めと焦りが混在するような一冊だった。

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