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コーヒーもう一杯*平安寿子

  • 2011/12/19(月) 18:49:56

コーヒーもう一杯コーヒーもう一杯
(2011/10)
平 安寿子

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結婚するつもりだった恋人にふられ、会社では大失敗。人生のピンチに陥った32歳の未紀は、勢いでカフェを開くことになった。経験もスキルもなし、地道に働いて貯めたお金を全部はたき、借金までして資金繰りに奔走。食品衛生責任者の養成講習会を受け、物件を探して改装し、食器や椅子や備品を集めて、メニュー作り。次々難題を片づけて、なんとかオープンしたけれど…。失敗したって大丈夫!この本を読めばあなたも自分のお店を持ちたくなります!お店経営の実用情報も有り。お役立ち小説。


いってみれば、カフェオープンを決めてから廃業するまでの顛末記、という一冊である。内装デザイン会社に勤めて、失敗例は嫌というほど見ているにもかかわらず、いざ自分のこととなるとなかなか思惑通りには行かないものである。甘さを指摘する人もいれば、いい顔だけ見せて素通りしていく人もいる。いまさらながら現実の厳しさを思い知らされる未紀である。オープンまでは、読者も未紀と一緒にわくわくしながらプランを練り、明るいあしたを夢見るが、蓋を開けてみれば、当初掲げた理想はなし崩し的に妥協点に落ち着き、目的さえも見失って心もからだもぼろぼろになっていく姿にこちらも意気消沈するのである。思わずがんばれ、と励ましたくなるが、撤退するなら早く決断するが吉、というアドバイスにも、なるほどと頷けるのである。重荷を下ろした未紀の次の道が、彼女の生きる道でありますように、と祈りつつ見守りたくなる一冊である。

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この記事に対するコメント

久しぶりに平安寿子らしい毒気を帯びた登場人物で、堪能しました
最近の作品はやや大人し目で、もの足らなかったのも事実です
ただ以前の「ストレートな辛辣さ」はやや影をひそめ
作者自身が見えてきた「一段高い位置」からの作品になった気がします
それぞれの人物が役割を果たし、いい出来でした
なぁんて、エラそうに書いてしまいました

  • 投稿者: チョロ
  • 2011/12/22(木) 12:48:09
  • [編集]

>それぞれの人物が役割を果たし

これ、ほんとうにおっしゃるとおりだと思います。
誰が欠けても、雰囲気が違っていたでしょうね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2011/12/22(木) 13:55:54
  • [編集]

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