東京ピーターパン*小路幸也

  • 2011/12/27(火) 18:39:04

東京ピーターパン東京ピーターパン
(2011/10/26)
小路 幸也

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印刷所の平凡なサラリーマン、石井和正、34歳。元・伝説のギタリストで、ホームレスの“シンゴ”、60歳。メジャーを夢見るバンドマン、“コジー”こと小嶋隆志26歳。寺の土蔵に引きこもりの高校生・田仲聖矢16歳と、その姉・茉莉26歳。「人を、撥ねてしまったんです」石井が起こした事故により、5人のセカイが交わるとき、物語が動き出す。小路幸也が贈る、ラブ&ミュージックな大人の青春小説。


2011年6月30日、22:52、誰だかわからない人物が車で人を撥ね、そのまま逃げた。その後につづくのは、年齢も職業も交わるところのない無関係な人びとの6月30日の様子である。辛うじて共通するのは音楽が好きだということ。冒頭のひき逃げとそれにつづく数人の人生、どこでどうつながるのか――あるいはつながらないのか――、興味津々で読み進める。ロックの神様といまも呼ばれる宮下ジロウと組んでいたギタリスト・シンゴ――いまはホームレスになっている――もキーのひとつになっているので、交わるとすればロックだろうと見当がつくが、一体どこでどうやって出会うのだろう、というのは想像もつかない。それがひとりの引きこもり高校生とその姉によって、いとも簡単に実現してしまうのである。それが6月30日、23:50のこと。それからの夢のような展開は一夜限りだからこその輝きだったのだろうか。もったいないような気がするが、きっとだれにとっても最良の選択だったのだろう。すべてが終わったのは、2001年7月1日の明け方である。たった一晩のこととは思えない充実ぶりである。胸躍る夢を見せてもらったような一冊。

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