夜叉桜*あさのあつこ

  • 2012/02/15(水) 18:59:54

夜叉桜夜叉桜
(2007/09/21)
あさの あつこ

商品詳細を見る

「生きるという、ただそれだけのことが何故にこうも不自由なのかと、思うことがございます」江戸の町で、女郎が次々と殺されていく。誰が、何のために?切れ者ゆえに世にいらだつ若き同心・信次郎は、被害者の一人が挿していた簪が、元暗殺者の小間物問屋主人・清之介の店『遠野屋』で売られていたことを知る。因縁ある二人が交差したとき、市井の人々が各々隠し抱えていた過去が徐々に明かされていく。生き抜く哀しさを、人は歓びに変えることが出来るのか。


遠野屋清之介シリーズ――と言っていいのか、同心・信次郎シリーズと言うべきか――、読むのがすっかり逆順になってしまったが、これが二作目である。『木練柿』で黒田屋の事件と言っていたのがこれであったのだ。おぞましい一連の事件である。人間の成せる業とは思えない血も涙もないやり口ではあるが、裏には紛れもない人間の懊悩が蠢いているのである。信次郎と清之介がまみえる際の緊張感、岡っ引きの伊佐次の思い入れや穏やかさ、清之介の迷いや希望といったものが、複雑に絡み合って、興味深い一枚の織物になっていくようである。人の心の闇を見せつけられたような一冊でもある。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する