クロス・ファイヤー*柴田よしき

  • 2012/04/02(月) 16:59:58

クロス・ファイヤークロス・ファイヤー
(2012/02/17)
柴田よしき

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天才ピッチャーでスターの麻由とくらべたら、わたしは等級の劣る地味な星。でもそんなわたしの方が、素質が上だなんて…。日本プロ野球のチームに、女性選手が入団。東京レオパーズ所属の楠田栞は、左腕でアンダースローの中継ぎ投手。客寄せパンダと陰で囁かれつつも、同僚で親友の早蕨麻由と励まし合いながら、プレイに、恋に、奮闘中。プロ野球は、才能と運、その両方を掴んだ者だけが成功できる過酷な世界。時にはくじけそうになりながらも、女であることも「幸運」のひとつなのだと、栞は自らに言い聞かせている。そんなある日、栞は臨時投手コーチの雲野と出会う。雲野は言う。おまえの恵まれた体と素質を活かせ、一流になれ、と。そして、とある目標のための特別指導が始まった…。


大のプロ野球好きで知られている著者のプロ野球物語である。ただひと味違うのは、主役が女子選手だということである。レオパーズに入団した早蕨麻由と楠田栞にスポットライトが当てられている。プロ野球の物語でありながら、生き生きとした女性のお仕事物語でもあるところが本作のいちばんの魅力だろう。タイプの違う二人の女性を登場させることで、それぞれの違った悩みや葛藤を浮かび上がらせ、客寄せパンダ的存在としてのジレンマや、野球選手としての体力のことや、恋愛の悩みまで、ひとりの女性としての揺れや悩みがリアルに描かれていて、彼女たちが実際存在するかのような錯覚さえ抱かされる。そして、球界の改革という将来的なことまで背負うことの覚悟を突きつけられたときの、それでも揺れる乙女心も女性作家ならではの細やかで著者自身が見つめているようなやさしさを感じさせられる。いまは夢物語だが、夢ではなくなる日が来るかもしれないという期待を抱かされる一冊でもある。

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