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紙の月*角田光代

  • 2012/04/12(木) 14:22:15

紙の月紙の月
(2012/03/15)
角田 光代

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わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が約1億円を横領した。梨花は発覚する前に、海外へ逃亡する。梨花は果たして逃げ切れるのか?―--自分にあまり興味を抱かない会社員の夫と安定した生活を送っていた、正義感の強い平凡な主婦。年下の大学生・光太と出会ったことから、金銭感覚と日常が少しずつ少しずつ歪んでいき、「私には、ほしいものは、みな手に入る」と思いはじめる。夫とつましい生活をしながら、一方光太とはホテルのスイートに連泊し、高級寿司店で食事をし、高価な買い物をし・・・・・・。そしてついには顧客のお金に手をつけてゆく。


梅澤梨花は逃げている。タイのチェンマイで、影のようにどこかに身を滑りこませたいとさまよっている。どうしてそんなことになったかが、それに続く章で明かされていく。主に梨花の語りで物語りは進むが、中学高校の同級生・岡崎木綿子、かつて梨花と付き合ったことのある山田和貴、同じ料理教室に通う中條亜紀らの語る当時の梨花と自分のこと、現在の自分のことなどから、梨花という人間の輪郭が少しずつ描かれていくのが興味深い。そしてまた、梨花を含めて彼らのだれもが、自分というもののありようを見失い、どこに重心を置いたらいいのか判らなくなって迷っている。お金はそんな人間たちにとって麻薬のようなものなのかもしれない。みな一様に正気を失ってふらふらと寄っていってしまうのである。物語の中で梨花が逃げ切れるかどうかはまったく重要視されてはいず、いまに至る過程のひとつひとつが部外者にとっては容易に予想できる判りやすさで、当事者にとってはどこで間違ったのか永遠に判らない心もとなさと共に丁寧に描かれているのである。ある意味怖い一冊である。

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