ある一日*いしいしんじ

  • 2012/04/26(木) 08:23:25

ある一日ある一日
(2012/02/29)
いしい しんじ

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こんどこそ生まれてきてくれる――。赤ん坊の誕生という紛れもない奇跡。京都、鴨川にほどちかい古い町屋に暮らす四十代の夫婦のもとに、待ちに待った赤ん坊が誕生する。産みの苦しみに塗りこめられる妻に寄り添いながら、夫の思いは、産院から西マリアナ海嶺、地球の裏側のチリの坑道まで、遠のいてはまた還ってくる。陣痛から出産まで、人生最大の一日を克明に描きだす、胸をゆすぶられる物語。


ある夫婦のある一日がつぶさに描かれている、それだけの物語である。ただ、その一日というのは、やっと授かり、待ちに待った我が子誕生のその日なのである。ほかのどの一日とも際立って違う一日なのである。産む者と生まれ出る者、そしてつきっきりで立ち会う者それぞれの存在のありようが、くっきり別のことではあるのだが、ひとつのことを成し遂げようとする一体感を持って胸に迫るのである。この物語は、この夫婦と生まれる子どもだけのものなのだが、読む者それぞれが、我が身のそのときのことを胸によみがえらせながら、特別な気持ちを抱きつつページを捲る一冊である。

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