てのひらの父*大沼紀子

  • 2012/05/15(火) 17:08:20

てのひらの父てのひらの父
(2011/11/16)
大沼紀子

商品詳細を見る

世田谷区、松陰神社前駅から徒歩15分。女性専用の下宿「タマヨハウス」には、年ごろの三人の女が暮らしていた。弁護士を目指す涼子、アパレルのデザイナーとして働く撫子、そして不条理なリストラに遭い、人生にも道にも迷い続ける柊子。幸せでも不幸せでもない日常を過ごしていた彼女たちだが、春の訪れとともに現れた真面目だけが取り柄の臨時管理人の過干渉によって、少しずつそれぞれの「足りない何か」が浮き彫りになっていく。


表紙は父の葬儀の日の幼い柊子である。わけもわからず黒ずくめの服を着せられ、手近にあった赤い傘を持たされた柊子。父はとっくに家を出ていて、柊子には父の思い出などひとつもないのだった。成長して一見明るく誰とでもうまくやっていける柊子だが、幼い日の境遇から、知らず知らず他人との間に見えない壁を築いてしまうようになったのかもしれない。彼女が暮らす女性だけの下宿・タマヨハウスに、ある事情で管理人のいとこのトモミさんがやってきてから、三人の下宿人たちの日常が少しずつ変わり始める。そして心のなかもわずかずつだが変化していくのだった。強ばったものがほどけるように、冷たく凍ったものが少しずつ溶けるように。足りないものを嘆くのではなく、持っているものにしあわせを見つけることが大切だと気づかせてくれるような一冊である。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する